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チャレンジ組合ちば 2019.11  企業組合あしたね

テーマ : 予算作成と予実績管理(工賃倍増5カ年計画作成のために)

補助事業名 平成30年度連携組織活性化研究会
対象組合等 企業組合あしたね
  ▼組合データ
  理事長 組田 香織
  住 所 千葉市花見川区長作町2499-6
  設 立 平成23年10月
  業 種 その他の障害者福祉事業(障がい者就労支援事業B 型事業所)
  組合員 5人
担当部署 千葉県中小企業団体中央会 工業連携支援部(℡ 043-306-2427)
専門家 経営コンサルタント
米田 和晋(グロービス経営大学院MBA)

障がい者就労継続支援事業とは?

 皆様に馴染みのない「障がい者就労継続支援事業A型、B型」とは、どのようなものでしょうか?
 就労支援事業の目的は障がい者(利用者と言います)の就労を通じ、経済的自立を促し、社会参加を実現する事で、行政と提供事業所が協働してサービスを提供しています。その中で、雇用契約を結ぶのがA型、雇用契約の締結が困難な方に就労機会を提供するのがB型で、あしたねはB型事業所を運営しています。
 では、障がい者就労支援事業で支払われる工賃(賃金)はどれぐらいでしょうか?
 実はB型事業所の平均工賃は15,603円(千葉県では14,308円。)、時給換算で205円でしか有りません。この金額で自立した社会生活が送れるでしょうか?
 障がい者の就労継続支援事業をサポートしている私たちは、「この金額では不十分、最低3万円の工賃に障害者年金や各種支援を合わせて初めて自立した社会的生活を送れる」と考えています。実際に厚労省でも「工賃倍増5か年計画」として平成24年度から継続した取り組みを行っていて、民間企業のノウハウを活用した工賃水準の向上と一般就労移行促進を目指しています。
 今回の企業組合 あしたねへの研究会はこのような前提の元に「工賃を向上するためには何が必要か」を考える場として設定されました。

就労支援事業の内容と課題

 就労継続支援事業は、利用者に対する給付費により運営されており、一方で利用者の工賃は利用者が自分で働いた労働の対価として事業の収益を分配する事になっています。この、「労働の対価を受け取る」という事が障がい者の達成感や成長を促進し、その収入を元にした社会参加によって更なる成長に繋がっていくと考えられています。(補足:事業所職員の給与や施設自体の家賃等は給付金によって賄われ、工賃は売上から直接原価・直接経費を除いた収益から分配されます) では、障がい者の就労事業とはどのようなものをイメージしますか?
 従来通りの請負作業を行っている事業所も多く有りますが、その作業工程や製品内容は健常者にひけを取りません。お菓子やパンなどの食品の製造販売や飲食店の運営、自主製品の製造販売など多様な内容です。また、行政機関からの受託で施設や公園等の清掃を行うなど、各種の作業を行っています。
 このような事業を行い、3万円以上の工賃を支払って居る事業所もありますが、平均は半分です。
 なぜ、せっかくの良い仕事をしながら、適切な工賃を支払うことが出来ないのでしょうか? 仕事の選択や、オペレーションの仕方に課題が有るか? 値付けや販売チャネル、マーケティングに問題が無いのか? 障がい者に対する支援・サポートが適切に行われているか?
 これらの課題を解決する方向を探るのがこの研究会の目的の一つです。

あしたねの事業と研修テーマ

 企業組合あしたねでは、設立以来小型家電の分解リサイクルや加工受託を中心に、事業所でのカフェ等も行ってきましたが、十分な成果が上がっていませんでした。
 そんな中、事業内容の改善のために一昨年から花見川区役所の食堂運営を受託し取り組んで来ました。今回の研修はこの食堂事業の軌道乗せと従来事業の見直しによる工賃倍増計画(中期計画)作成のための組合員のスキルアップが目標になります。

予定した研究会の内容

 第1回  就労支援事業の意義と企業組合の理念
 第2回 就労会計と売上・利益
 第3回  競合分析とマーケティング
 第4回  工賃目標達成の為の計画作成
 第5回 中期計画作成
 第6回  四半期決算による予実績管理 
 今回の研究会は、二部構成を取り、前半で座学、後半では実際の事業の数字を見ながら改善策を考える時間をとり、単なる研修に終わらずに身近な知識として身につくように配慮しました。また、収益を上げるための工夫に留まらず、福祉系のマインドを満たしながら利用者のための活動が工賃向上に繋がるような意識付けを心がけ、職員の自主性と満足度を上げる事を行いました。

事業の成果

 今回の研修会を通じ、花見川区役所食堂事業の収益性は大きな改善をする事が出来ました。
 通常、利益増のためには売上の拡大を考えますが、今回は逆に値上げと提供数量の制限により無駄のない仕入と作業効率の改善を行い、利益率のみでなく利益額も伸ばしています。これは、職員一人一人が利益を出す構造を理解し、最大利益額を得るための試算と、それを実現するための仕組みを考え実行した事によります。
 同時に、今後の工賃倍増計画実現のために必要な事業規模、利用者数、職員体制などを、経営ベースと利用者満足ベースの双方から検討する事が出来、新しい事業案を同じ視点から評価判断する事が可能と成りました。

今後の事業展開・展望

 企業組合あしたねの事業規模や成果はまだまだ小さなものです。就労支援事業においては一般企業とは異なり、利用者数や設備・配置基準の制約から投資による規模拡大が難しいという面があります。工賃倍増計画の達成は難易度が高いのは事実ですが、事業目標の方向性の共有とやれることの理解は出来たと思います。今回の研究会を基に事業の将来性と計画実現の為の制約要因の理解を進めながら目標に向けて進んでいけるものと確信しています。

一般企業の皆様へのお願い

 障がい者の工賃向上達成のためには皆様方のご協力が必要です。健常者が1時間で出来る作業が障がい者では3時間、4時間掛かるかも知れませんが、結果が同一であれば成果物に対して同一の評価をして頂ければ幸いです。適切な評価とご指摘が障がい者の就労意欲を高め、社会参加を実現する力となります。

(経営コンサルタント(グロービス経営大学院MBA) 米田 和晋)


『中小企業ちば』令和元年11月号に掲載 (※内容・データ等は掲載時の物です)

 

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