テーマ : 組合員の経営体質強化及び地域コミュニティ再構築のための新たな取り組み

補助事業名 平成25年度組合等新分野開拓支援事業
対象組合等 協同組合佐原信販
  ▼組合データ
  理事長 鈴木 重夫
  住 所 香取市佐原イ525
  設 立 昭和 27 年 6 月
  業 種 小売業、飲食店中心の異業種
  会 員 64人(平成25年3月31日現在)
担当部署 千葉県中小企業団体中央会 商業連携支援部(℡ 043-306-3284)
専門家 Eマネージメント研究所 所長 江波戸 勝(中小企業診断士)

背景と目的

 香取市は人口が8万3千人で、毎年1%程度の人口減少を来たしており、高齢化率は29 %で超高齢社会となっています。高齢者のみの世帯は一般世帯の2割にもなっており、高齢者の生活支援及び買い物弱者対策などが必要となっています。
 当組合の組合員が所属する商店街は、香取市佐原地区の中心商業地を形成する11の商店街で、総店舗数300店(空き店舗を除く)で構成されています。街区内には以前は2店の大型店があり、地域中心商店街としての機能を果たしていましたが、平成16年に老舗デパートが閉店してからは、空き店舗が徐々に発生してきており、現在81の空き店舗を抱えて厳しい状況が続いています。
 当組合は昭和27年設立以来、佐原地区商業の中心商店街として60年間、地域住民の豊かな消費生活を支え続けてきましたが、老舗大型店の閉店に加えて中小商店も閉店を余儀なくされている状況で、組合員数も減少してきています。
 この度、組合等新分野開拓支援事業の一環として、地域住民のアンケート調査を実施したところ、当地域商業の衰退要因として、魅力的な店舗が少ないという結果が指摘され、今後の発展のためには個々の商店の魅力づくりが必要不可欠であることを再確認したところです。
 また、これからの当組合の存続を図るためには、超高齢社会を迎えている当地域において、地域コミュニティの再構築のための事業が期待されていることも確認されました。
 これらの結果を踏まえて、組合員等の企業体質の強化を図る事業を実施するとともに、組合事業の新たな展開に向けた取り組みとして、地域コミュニティの担い手としての事業を行うことにより、組合の経営体質の強化を図ることが必要となっていました。

事業の活動内容

 組合の構造改革への取り組みに際して、組合のスローガンを次の通り設定し、そのスローガンのもとで各種の事業を進めていくこととしました。
 「豊かなくらしを支え続けて60年。これからもずっと…百年企業(組合)を目指して」

26-04-01

1 構成組合員等の体質強化に資する事業

26-04-02  ①「まちゼミ」の開催による顧客との信頼関係の醸成  
 「お客様には満足を」・「お店には新規顧客と売り上げを」・「街には賑わいを」の三方よしの事業として全国各地で実施されている「まちゼミ」を当地域においても実施し、個店の魅力の再確認と顧客との信頼関係の醸成を図り、お店と商店街のファンづくりを行うものです。
 ②一店逸品研究会開催事業一店逸品研究会の開催により、 個店経営者の経営革新への取り組みを促進させ、個店のMDの見直 しをすることで、地域住民から強い要望が上がっている個店の魅力 向上を図り、組合員企業の客数増加、売上効率を高め、組合の安定 的な運営に資するものです。

2 地域コミュニティ再構築のための新たな取り組み

 当組合の行っているカード事業は、ICチップを埋め込んだクレ ジット機能付きのカードを採用し、カードホルダーが18千人で、ポイ ント売上高も3億5千万円という実績に加えて、毎年300名を超える新規加入者がいることから、カード事業は地域住民の生活に浸透し、支持を得ているものといえます。
 ただ、クレジット機能はほとんど使われておらず、システムも導入から14年を経過しており、ハードの老朽化が目立っていたため、新 たなシステムを導入することにしました。
 今後のカード事業の運営については、システムの維持管理費及び新規カード発行手数料の負担を軽減するとともに、高齢者にも安心 して使用できるカードシステムとするために、ポイント機能のみのリ ライト式カードシステムに変更し導入することにしました。
 また、ポイントカードを活用した新たな事業として、「地域活動に 参加した人にポイントを付与する事業」と「地球環境保全活動に参加した人にポイントを付与する事業」を行うことにしました。

事業の成果

 これらの事業の実施に際しては、 国の地域中小商業支援事業補助金を活用し事業化に取り組んでおり、「まちゼミ」「一店逸品研究会」はそれぞれ専門家を招いて勉強会を開催して、それぞれの事業について理解を深めています。
 カードシステムの更新は、4月から新しいカードに切り替えるべく作業を進めています。
これにより、新規カードの一枚当たりの発行経費が十分の一に削減されるとともに、加盟店でも発行することが可能となり、使い勝手のよいものとなります。
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今後の事業展開・展望

 「まちゼミ」の開催は、県内では4番目の開催地となる予定で、現在は参加店の募集を行っており、4月~5月にかけての開催を目指しています。 「一店逸品研究会」については、現在、佐原商店会連合会との共同開催の話が持ち上がっており、このことが進展すればオール佐原での取り組みとなり、「まちゼミ」と合わせて、地域商業者の構造改革への取り組みが加速され、地域での活動効果もより大きなものとなり、その成果が期待されます。
 また、当組合事業のもう一つの柱である商品券発行事業は、超高齢社会の中で地域の元気な高齢者が助けを必要とする高齢者を支援する「地域支え合い事業」との連携を検討しています。
 この事業は、元気な高齢者には働き甲斐を提供し、助けが必要な高齢者には気軽に利用できる安心感があり、その謝礼として地域商品券を活用することにより、地域経済の活性化にもつながる事業といえます。
 この事業を実施するうえでは、既存の社会福祉事業やシルバー人材センターで行っている業務との棲み分けが重要で、地域のNPO団体や福祉団体との連携の可能性など、実施に向けた研究を進めていくことを考えています。(江波戸 勝)


『中小企業ちば』平成26年4月号に掲載 (※内容・データ等は掲載時の物です)