テーマ : 魅力ある共同店舗を目指して
        ~顧客囲い込みのためのカード活用の方向性研究~

補助事業名 平成24年度組合等新分野開拓支援事業
対象組合等 協同組合東金ショッピングセンター
  ▼組合データ
  理事長 中村 秀朗
  住 所 東金市東岩崎8-10
  設 立 昭和46 年3 月
  業 種 小売業、飲食店中心の異業種
  会 員 33人(平成24年6月現在)
担当部署 千葉県中小企業団体中央会 商業連携支援部(℡ 043-306-3284)
専門家 伊藤大海事務所 代表 伊藤 大海/
クエストフォー株式会社 代表取締役 伊東 寛記

背景と目的

 (協)東金ショッピングセンター(以後、当SC)は、千葉県の県庁所在地である千葉市と、太平洋岸の拠点都市である銚子市の中ほどに位置する中核都市の東金市中心市街地に立地する。
 「他にない質の良いものを売る」当SCは東金市のみならず周辺行政地域を含めた拠点性を持っており、GMSのイオンと一体となる中核的施設である。 
 しかしながら、近年は全国的な地方部の傾向同様、周辺ロードサイド店の開発や集積化などが進み、年々、その求心力が低下し商圏が狭隘化してきている。
 そこで当SCでは近年、千葉県中小企業団体中央会の支援制度などを活用しつつ、SC活性化のための検討を続けてきており、テナントミックスの改善等の取り組みも進めてきている。
 「顧客囲い込みのためのカード活用の方向性研究」(以後、研究会)もその一環として取り組まれたものだ。今後の電子マネーの導入の際の考え方とカードを活用したサービスの充実について検討した。

事業の活動内容

①研究会の経過と内容

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②次代を担う若手による研究会

 研究会はこれから将来の当SCを担う若手の組合役員を中心とし、若手組合員の集まりと、マーケティングの専門家であり、ファシリテーターも勤める中小企業診断士とIT専門家によって進められた。


③顧客のカード利用実態調査実施

 具体的な検討に先駆けて、研究会では来店客がどのようなカードや電子マネーの利用をしているのか、あるいは価値観を持っているのかを把握する実態調査を行った。
調査は研究会メンバーが自ら店頭に立ち、顧客にアンケートを聞き取りながら進められた。
調査結果からは、当SC利用者の電子マネーやカード利用実態の特徴が見えてくるとともに、将来の電子マネーでの買物利便性への対応の必要性、当SCオリジナルの「Sカード」の保有率の高さと、一方で活用しきれていない課題が明らかになった。


④宿題・レクチャー・ディスカッションの取り組み

 研究会では毎回、ワークシートを用いた宿題が出されたほか、ディスカッションが行われた。これは、「単にレクチャーを聴くだけの研究会」にするのではなく、メンバーの納得性のある検討を行っていくとともに、近い将来、SCの経営を中心的に担っていく若手の主体性をより高めていくための人材育成の取り組みでもある。
各回で話し合われたおおよその内容と状況は以下のとおりである。
○電子マネーの必要性について
電子マネーの特性や仕組み、マクロ的な浸透状況についてレクチャーを通し学習した後、アンケート調査結果も踏まえて「当SCにとっての電子マネーの必要性について」のディスカッションを行った。当初、電子マネーの必要性への意識を持ち倦ねていた参加者が多かったが、ディスカッションを通し、これからの検討のベースとなる認識が共有化された。
○当SCにおいての顧客囲い込みを考える
電子マネーやカードといったツールを揃えるだけでは、十分な活用は見込めない。そこで、顧客囲い込み戦略の基本を学習するとともに、当地域の事業環境を再度確認し、当SCがおかれている環境と、地域浸透のためにどのような戦略をとっていく必要があるのかを共有化した。
○電子マネー、カード活用のポイント
いくつかの地域や企業での取り組み事例について学習を行い、その上で「効果的な電子マネーの活用」についてディスカッションを行った。
「電子マネーはそれ単体では集客のツールとならない」という重要な気付きにいたるとともに、「顧客に対し仕掛けていくことの必要性」に対しての認識が共有化された。
○最適なシステム導入
電子マネーを導入するにも、そのハードウェアやサービスはさまざまである。どのようなサービスがあり、コストのかかり方がどの程度なのかを学習し、その上で当SCに最適と思われるシステム導入方法について、それぞれのメリット・デメリットを議論する中から明らかにしていった。

事業の成果

実のところ、参加者のほとんどが電子マネーと無縁な生活を送っているなど、当初は漠然としていた電子マネー導入の検討やカード活用の必要性であった。しかし、事業環境を踏まえ
・「レクチャーによるインプット」
・「ディスカッションによる検討の磨き上げとアウトプットの共有」
・「宿題による個人作業」
を通すことによってそれは明確になった。また、電子マネーなどの活用はそれ単体で考えるのではなく、戦略的な思考を持ちながら他のソフト事業と連携していく必要性、電子マネー自体は直ぐに取り組めなくとも、それ以外で直ぐに改善に取り組めるソフト事業への課題なども、研究会を通した中から認識が明確化した。丁寧にステップを設定しながら、認識を共有しつつ、短期、中期的な視点から今後の方向性のアウトラインを描けたことは成果であったといえる。

今後の事業展開・展望

25-12-2 当SCはこれからもより地域に浸透し、商圏の足場をしっかりと確保していくことが欠かせない。
主婦層に大手商業ブランドの電子マネーカードの浸透が進むなど、時代はこれから商業施設で「電子マネーが使えて当然」の時代になってくる。特にこれから先、20年は主たる消費者層となるであろう、子育て世代対策には必要だ。
もっとも、電子マネーが使える環境は買物のインフラであって、それだけで集客力はない。他のソフトの取り組みと連動していく必要がある。当SCはオリジナルのSカードの浸透率の高さという強みがある。このカード事業をうまく連動させつつ、顧客との関係を深めていくことが期待される。(伊藤 大海)


『中小企業ちば』平成25年12月号に掲載 (※内容・データ等は掲載時の物です)