テーマ : これからの組合事業の在り方について~執行部や組合事務局が担うべき役割とは~

補助事業名 平成27年度連携組織活性化研究会
対象組合等 千葉市工業センター(協)
  ▼組合データ
  理事長 飯村 明義
  住 所 千葉市花見川区千種町49
  設 立 昭和44 年5 月
  業 種 鉄鋼業
  会 員 25人
担当部署 千葉県中小企業団体中央会 工業連携支援部(℡ 043-306-2427)
専門家 中小企業診断士 清水 透

背景と目的

 当組合は団地組合である。製造業者が、製造拠点を集団で取得し、広い土地で騒音等の心配をせずに事業を行うために組合を設立した。
 本活性化研究会事業を活用しようとした背景には、設立後約50年を経て、当初の組合の存在意義を見直す必要が生じてきていたことがある。団地組合は、組合設立当初の目標は明確である。しかし、団地が完成し、自社の工場を建て、共同受電事業を始めるなど、快適な事業環境を作り上げた段階で目標はクリアされ、その後は、維持管理を地道に行うことが組合の存在意義になる。さらに年月が経過すると、日常の維持管理以外の新たな問題が発生してくる。それは、組合員の代替わり、廃業、事業譲渡、移転などに伴う、持分の移動の問題である。この問題は、団地組合の新たな存在意義を考える前に、組合員が納得する形で解決しておかなければならないものであるが、土地の所有権、組合員資格、過去の持分移動との公平性、などが絡んだ難しい問題になる。
 持分の問題は、自己資本である出資金を払い戻すことがあるという点で、会社と異なる組合特有の問題である。この問題を組合員が納得する形で解決しなければ、その後の「新存在意義の構築」は困難なものになる。本事業活用の目的の中心は、組合員が納得する持分の移動方法を探ることにあった。以下は持分移動の一般論を筆者が解説したものである。

事業の活動内容

 本事業の具体的活動内容は、三回にわたる組合員の研究会での協議である。協議の基礎となる知識を共有するため、中協法及び定款例の持分に関する規定を学ぶことから始めた。その後、いくつかの問題について協議したが、本稿では、自由脱退・法定脱退における、変更した定款の持分払戻規定の適用の問題について次のような仮の事例を設定して解説・協議した。

*仮の事例
 事業年度=4月~3月、定款変更=当年五月末の通常総会で決議、変更内容=持分全額→出資額限度、一口額面額=一万円、一口時価=十万円、自由脱退予告期間=90日

 脱退者の持分計算に関する中協法の規定は、第20条二項「脱退者の持分は、脱退した事業年度の終における組合財産によって定める」となっている。「組合財産」の評価は、時価評価(最高裁判例)とされているので、土地等の物的資産を含めて時価評価して決まる。持分計算は時価だが、払戻をその時価持分額で行わなければならないというものではない。中協法20条一項には「組合員は自由脱退又は法定脱退をしたときは、定款の定めるところにより、その持分の全部又は一部の払戻を請求することができる。」とあり、払戻額は定款規定で制限できる。この法規定を受けて、全国中央会の定款参考例は、全額ではない一部払戻のケースとして「出資額限度」と「簿価財産限度」を提示している。事例組合は、「全額払戻」規定から「出資額限度」への定款変更を行ったという設定にした。
 右のような組合において、当年4月1日に法定脱退した者と自由脱退の予告をした者に対する持分払戻規定の適用は、通常次のA・Bのケースが考えられる。

A 脱退成立時点の定款規定適用

 自由脱退の予告と法定脱退は同日だが、自由脱退の脱退成立時点は翌年三月末で、法定脱退の脱退成立時点は当年四月一日である。脱退成立時点の定款規定を適用するとすれば、自由脱退者には定款変更後の『出資額限度=一口一万円』の規定が適用される。法定脱退者には定款変更前の『持分全額=一口十万円』が適用される。

B 法定脱退には法定事由発生時点、自由脱退は脱退予告時点の定款規定を適用

 この方法だとどちらのケースも『持分全額=一口十万円』が適用される。自由脱退予告が当年四月一日、法定脱退事由発生も同日、この日の定款規定は『持分全額』だから、両者ともに全額払戻が適用される。
 ABのどちらにも一長一短ある。Aには同じ日に意思表示したのに払戻額が異なるという不合理が存在し、Bには通常総会の招集通知を見て「定款変更」前の全額払戻を狙った脱退予告が出る不合理が存在する。全国中央会の質疑応答集はAを採用し、次のように解説している。「自由脱退の場合も法定脱退の場合も脱退成立時点の定款規定を適用するのがよいと思うがいかに」との質問に対し「貴見のとおり」と回答しているのである。
 この回答は、脱退成立時点の定款規定を採用する、というものである。しかし、予告期間は組合保護規定なので、組合が承諾すれば短縮可能とされていて、予告期間を満たさない自由脱退もありうる。組合の承諾の有無によって持分払戻規定の適用が一口=一万円になったり十万円になったりしてよいのかという疑問が残る。

C 持分払戻金額算定時点の定款規定を適用する

 A・Bの不合理・不都合を避ける方法として、定款規定の適用の時期に関しルールを決めておくのも一つの解決策として有効であろう。例えば、定款規定の適用時点を払戻額算定時点の定款規定とする方法がある。前掲の中協法20条二項には「脱退者の持分は脱退した年度末の財産額によって定める」と書いてある。ならば、定款規定もこの時の規定を適用するように20 条二項を少し変えて「脱退者の持分の払戻は、脱退した事業年度の終における組合財産及び定款規定に基づき行う」としてルール化するのである。このルールにより脱退者の持分算定時点と定款規定の適用時点が一致して分かりやすくなる。脱退予告時点・脱退成立時点に加え、第三の方法として「持分算定時点」の定款規定適用をルール化して総会で議決しておくことで不都合・不合理をある程度緩和できる。

事業の成果

 本活性化研究会事業の成果としては、組合員の間で持分に関する理解が深まったこと、持分に関する組合員間の不公平感の解消に組合員が前向きになったこと、組合員の間で対話に前向きな姿勢が醸成されたこと等があげられる。

今後の事業展開・展望

 今後の事業展開は、持分払戻に関する未解決の問題、例えば、加入金を払って加入した組合員に対して出資額限度への変更後一口一万円を払い戻せばよいか等、についてさらなる検討を継続すること。そして、展望は、新たな組合の存在意義を構築して、組合員の団結力を高め、当団地組合の価値を高めることとなる。
(清水 透)


『中小企業ちば』平成29年1月号に掲載 (※内容・データ等は掲載時の物です)

 

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