テーマ : 組合員店舗の魅力創出について~接客力の向上を目指して~

補助事業名 平成24年度連携組織活性化研究会
対象組合等 浦安魚市場協同組合
  ▼組合データ
  理事長 池田 実夫
  住 所 浦安市北栄1-10-20
  設 立 昭和28 年12 月
  業 種 小売業、飲食店中心の異業種
  会 員 29人(平成24年6月現在)
担当部署 千葉県中小企業団体中央会 商業連携支援部(℡ 043-306-3284)
専門家 清水ビジネスソリューションオフィス 代表 清水 真(中小企業診断士)

背景と目的

 浦安魚市場協同組合は昭和二十八年の設立以来、浦安地域の食品流通拠点として行商従業者や飲食店といった商業者や一般消費者を顧客として事業活動を続けてきました。しかし、近年の社会・経済情勢の変遷により、行商従業者の減少が激しくなり、これが組合員店舗の経営を圧迫しております。当組合としてはこの窮状を打破するために、浦安地域に居住する多くの消費者に改めて着目し、また東西線浦安駅の近隣に立地する強みも活かせる、一般消費者を積極的に取り込む戦略を指向することとしました。そのためには顧客に対する接客力を向上させることは必須です。本事業は現在の接客力を正確に把握し、そこから接客力の向上策を策定していくことを目的として取り組みが開始されました。

事業の活動内容


①調査方法の策定

 まず、事業の概要を会議の参加者に説明した後、今後の事業の進め方について参加者全員で討議しました。ちなみに参加者は、組合の役員、組合の販売促進部に所属する組合員、千葉県中小企業団体中央会の職員の方々です。調査を外部の調査会社に委託するのですが、その調査方法を皆で討議しました。
 1 調査対象は全組合員店舗か、一部の店舗のみとするか。
 これについては、全員一致で全店実施の方針が決定しました。やはり、組合員の中で差をつけることは良くないとの配慮と、全店の接客力の把握と接客力の向上がなされなければ市場を訪れる顧客は増えないとの認識によるものでした。
 2 調査項目を決定する。
 調査会社からサンプルとして出してもらった調査項目を一つ一つ全員で吟味し、この組合に最も適した調査項目を決定しました。
 調査会社から提出された調査項目は大手のスーパー向けの項目であったため、魚市場特有の項目(アフターサービスで氷や発泡スチロールを勧めてくれたか等)を追加し、より実践的な調査項目としました。
 3 平日に調査か、土日に調査か。
 平日は年配者の常連客が多く、土日は比較的若い客層(共稼ぎの夫婦、こだわりを持つ男性客、グルメ嗜好の女性客等)になることから、どちらを選択するかを協議しましたが、土日に調査を実施することに決定しました。また、調査期間は平成二十四年八月~九月に決定しました。
 不定期で来店する顧客がリピーターになってもらうことが最大の目的であるため、そのような顧客からの接客評価を知りたいという要望が出されたことが大きな要因でした。
 4 調査結果をどこまで発表するか。
 調査結果を吟味し、対応策を検討する段階までは今回の会議の参加者のみで行い、その結果を後日全組合員に発表するというやり方に決定しました。また、対応策の協議及び全体の発表については、調査の全体結果のみを使用し、個別店舗の調査結果は、興味がある店舗が自ら申請を行うことで自店舗の調査結果のみ閲覧できることができるように決定しました。


②調査結果の分析と対応策の策定

 調査結果を基に具体的な対応策を協議しました。なお、調査結果の詳細はここでは割愛させて頂きますが、組合全体の接客力としては非常に高い評価がされたことは報告させて頂きます。
 このステップの具体的な進め方ですが、調査結果を詳細に分析した資料を基に徹底できていなかった項目を複数ピックアップし、その項目をどのようなことをすれば改善できるかを参加者全員で検討しました。このステップについては2回に分けて検討を行い、1回目は参加者全員の様々な視点からランダムに意見を出してもらうことに徹し、2回目は1回目の結果を具体的プランとしてまとめ、これをたたき台にして更に具体性を高めるやり方で会議を進めました。多くの参加者が自らの接客力を客観的に評価でき、また自分達がやってきた良いやり方を発表してもらうことができたために、非常に実践的なプランにまとめることができました。


③調査報告書の発表

 調査報告書については、全体評価、項目別毎の分析結果、評価の高かった具体的な行動、苦手分野の傾向、苦手分野の店舗レベルでの対応策、苦手分野の組合レベルでの対応策といった形でまとめて全体発表を行いました。全体発表では、多くの組合員が参加してくださり、興味深く聞いてくれたことが印象に残っています。

事業の成果

 事業の成果としては、組合全体として、また個店レベルとして接客力がどのくらいあるかといった客観的評価を受けられた点です。これにより、独りよがりになりがちな接客を見直すきっかけができました。また、個店レベルと組合レベルでの対応策を提示したことで、組合または個店レベルの接客力が向上し、また組織としての接客の方向性が今後統一されることも期待できます。もともと通常の小売店に比べて接客レベルが高いことが強みではありますが、この取り組みにより更に接客レベルを向上させることで、より多くのリピーターを新たに獲得できる可能性は高まるものと期待されます。

今後の事業展開・展望

 今回の取り組みはできれば継続して行い、PDCAサイクルにのっとってどんどん改善していくことが望ましいと思います。また、営業時間が一般消費者向けではないため、そういった部分も改善していけば、更に安定して一般消費者を獲得できるものと思われます。卸売業は今後の伸びしろがあまり期待できないことから、これからは接客を含めた一般消費者向けの取り組みに色々と挑戦していくことが重要であると思われます。 (清水 真)
25-10-1
25-10-2
(参考) 浦安魚市場協同組合ホームページ http://www.urayasu-uoichiba.ne.jp/


『中小企業ちば』平成25年10月号に掲載 (※内容・データ等は掲載時の物です)