テーマ :地元のお客様に着実に伝わるお店の魅力表現方法
補助事業名 | 組合研究集会 | |
対象組合等 | 松葉町商店会協同組合 | |
▼組合データ | ||
理事長 | 斎藤 敏文 | |
住 所 | 柏市松葉町3丁目22-1 | |
設 立 | 平成2年6月 | |
業 種 | 小売業、飲食店中心の異業種 | |
会 員 | 24人 | |
担当部署 | 千葉県中小企業団体中央会 商業連携支援部(TEL043-306-3284) | |
専門家 | 片岡 由美(中小企業診断士) |
背景と目的
松葉町商店会はJR北柏駅から東武バスで約15分、公団分譲団地や一戸建てに囲まれた近隣型の商店街である。約30年前に開発された地域であり、現在の住民や商店経営者は60歳前後の年代層とその子供世代中心となっている。
近隣の国道16号沿いにある大山台地区は、柏市内でも大型店の激戦地区である。松葉町商店街では、平成5年からワクワクカードを導入し、顧客の囲い込みに努めるなど対策を講じているものの、平成17年につくばエクスプレス開通、翌年「ららぽーと柏の葉」開業など、周辺のオーバーストア状態は激しさを増す一方である。
平成20年には同地区にある松葉中央商店会等と連携し、県のモデル事業にも取り組んでいる。20回を越える「松葉町ふるさと祭り」では、ご当地ソング「ラ・ラ・ラまつば」の盆踊りが定着したほか、「ほっこり散歩道マップ」作成等を通じて地域のコミュニティ活性化にも貢献してきた。
商店街活動は、大きくは『夏はイベント主体に取り組み、冬は勉強期間』と定めており、平成23年1・2月に、今後の商店街マップ作成を前提とした2回の勉強会(各2時間)を実施した。
テーマは『地元のお客様に着実に伝わるお店の魅力表現方法』である。講義とワークを織り交ぜた参加型の勉強会とした。
事業の活動内容
① 時代の空気を感じ、思い込みの枠をはずす
今はだれもがなんとなく不安を感じている時代であり、今まで以上に商品の品質以外の価値、特にコミュニケーションを重視する時代は、「顧客関係」を築くことが重要価値となることを確認した。
さらに、「これまでずっとそうだったから」「いまさらやってもうまくいかないから」等、思い込みにはまっていないかのチェックや意見交換も行った。
② お客様との価値交換を考える循環マップ作成ワーク
お客様(取引先)とお店との間でどのようなモノやコトがやり取りされているのかを書く循環マップ作成ワークを行った。
これは、自店がお客様に何を与えているのか、お客様から何を得ているのかを確認するマップで、お互いにどのような価値のやり取りや価値の循環があれば良好な関係を築けるかを確認できる。
実際に書いた参加者からは「お客様から情報や紹介、ありがたく思うクレームなど、思った以上に頂いているものが多いことに改めて気づいた」などの感想があった。
③喜ばせたいお客様の明確化イメージマップ作成ワーク
漫然とその時売れるものや競合に翻弄されていては、誰のためのお店にもなれない。喜ばせたいお客様を年齢、職業、家族構成、関心ごと、悩み、夢、日々の過ごし方など、徹底的に書き出すイメージマップ作成ワークを行った。
そして、お客様は理屈では動かないこと、感情に触れた時に提案を受け入れてもらえること、何事も伝わらなければ存在しないも同様であるなどを確認した。
④理想のお店をイメージするイメージマップ作成ワーク&マーケティングシート作成ワーク
理想のお店づくりには、自分の目線(自分の願望など)とお客様の目線(要望や期待など)の双方を満たし、そのバランスを考えることが大切であることを確認した。
その上で、自分が今後こうしたいというお店のイメージを、制限を設けずに、思いつくまま書くイメージマップ作成ワークを行った。
そして、どんな商品・サービスを提供するのか、特徴を一言で言うとどんな表現になるのか、価格に納得性を感じる理由、お客様とどのように接するのか、店内をどのようにするのか、気持よく過ごせるために工夫すること、店外への情報提供の仕方などをマーケティングシートに落とし込んだ。
⑤参考事例の紹介
ワークに加えて、マップづくりに取り組んだ商店街の事例や活動内容をプロジェクターで紹介し、現物マップの回覧を行った。
◆千丸台商店街
横浜市保土ヶ谷区千丸台団地
『150円商店街(開港150年を記念した横浜市の商店街活性化策のひとつ。店頭に150に因んだ商品ワゴンを置き、お客様を店内に呼び込む)』、勉強会を通した若手育成、有志による自費チラシ作成等がきっかけで会員が増加。
◆元気塾
川崎市中原区商連青年部
商店街の枠組みを越えた青年部の自主的勉強会の成果披露がきっかけで、タウン誌に地域情報&お店情報を掲載。自費自作による情報誌は店舗ビンゴ、街の昔の写真掲載など、多くの話題を呼んだ。
事業の成果
商店街メンバーが意見交換をしながらワークやマーケティングシートづくりを行ったことで、個々のお店にとっての今後のテーマやターゲット、目指すべきマーケティング方策の基本的な方向が明確になった。
商店街内で共有できる知識やマーケティングのフレームワークの基礎材料が揃ったことは、その後、引き続き商店街メンバー同士が自主的に集まり、内容を深めていく環境が整ったことを意味する。
今後の事業展開・展望
勉強会直後の東日本大震災、それに伴う消費意欲低迷等により、商店会は通常の活動を取り戻すことに注力せざるを得ず、23年度のマップ作成は保留、24年度に実施予定だと聞いている。
現段階では、マップ内容の詳細は未定であろうが、商店街が地域になくてはならない存在であり、常に住民に価値を提供し続けていく組織であることを表明する内容となることを期待している。 (中小企業診断士 片岡 由美)
『中小企業ちば』平成24年2月号に掲載 (※内容・データ等は掲載時の物です)