テーマ : 集客効果を高める商品・サービスの企画及び販促方法の研究について

補助事業名 平成28年度連携組織活性化研究会
対象組合等 千葉県自動車車体整備協同組合
  ▼組合データ
  理事長 長嶺 隆路
  住 所 千葉県佐倉市宮本字手洗199
  設 立 昭和58年3月
  業 種 自動車一般整備業
  会 員 125人
担当部署 千葉県中小企業団体中央会 工業連携支援部(℡ 043-306-2427)
専門家 (株)アドガレージ 代表取締役 伊倉 大介

背景と目的

 千葉自動車車体整備協同組合は県内の自動車鈑金塗装業が集まる団体で業界の活性化を目指し活動をしています。このたび、同組合からご依頼いただいた「集客」についての講演をきっかけに、「集客について考える場を設けてほしい」とお声掛けいただき、全4回の研究会のご依頼をいただました。
 現在、自動車鈑金塗装業は経営の変革を求められているステージに突入しつつあります。車の衝突防止装置や自動運転化による事故の減少、社会的には大変意義のあることですが、損傷した車を直す自動車鈑金塗装業にとっての事故の減少は、決して諸手を上げて喜ぶことのできる状況ではありません。とある業界誌のデータでは2030年には自動車鈑金塗装業は3分の2になるとの推測もあるなか、事故の減少だけでなく、「技術者の確保が難しくなってきている」「自動車修理技術の高度化」「設備投資の必要性」など、業界を取り巻く環境は、各工場の経営をますます難しくさせていきます。
 そして、今まで元受け先からの下請け仕事に頼っていた工場は、自立した経営をするための術をもっておらず、集客の取組も、何から手を付ければよいのかわからない工場が非常に多いのが実情です。
 集客は単純に、どんな媒体を使って広告するか、広告予算をいくらかけるかというような、打ち手の方法論で解決できるものではありません。まずは自社の魅力を自身が認知し、その魅力を媒体に載せることが必要になります。また、広告宣伝という一つの方法だけでは完結しません。「認知・来店」から始まり「成約」「納品」「アフターフォロー」と顧客との接点ごとに、適切な対策を講じることが必要となるのです。

事業の活動内容と成果

 集客に限らず経営全般に言えることですが、経営者をはじめ経営に携わっている方は様々なことを考え、何か行動しなければと考えています。しかしながら、なかなか行動に移せないのは、その考えを整理することを怠っているからだと私は考えています。そこで今回の研究会では参加者の皆様の頭の中を整理していくことを中心にそれに必要なワークやディスカッションを進めていきました。そして、参加者の各工場での集客の取組について整理していくとともに、組合活動において何をすべきかの整理も並行して行うことにより、組合の存在意義を高め、価値向上に繋げることも狙いとしました。
 まず、曼荼羅シートというワークシートを利用して、参加者の方々が自社の維持発展のために何が必要なのか、あるいは集客のために何が必要なのかを整理してもらいました。このシートは目標設定やアイデア創出等、様々な「頭の中の整理」に使えるシートです。シート作成は個人差があったものの、物事を具体的に考えているかを自己認識することができますし、自身が考えている事を見える化することができます。

(曼荼羅シート)


 それにより抽出した集客施策に対し、それが簡単なのか難しいのか、実行することにより経営にインパクトがあるのかないのかを整理していきます。そして整理したあとに実行すべき集客施策について優先順位付けを行い、直近で実行するべき施策を抽出します。あとは抽出した施策についての詳細なアクションプランを作り、プランの日付を守りながら、それを粛々と実行していきます。理論的にはその流れで頭の中を整理しつつ、効果が高いであろうアクションを起こすことができます。今回の研究会ではそれぞれの取組に苦戦しながら取り組む方、元々具体的に物事を考えていてスムーズに進む方、いろいろな方がいらっしゃいましたが、頭の中を整理する方法はお伝え出来たと思います。結果として興味深かったのは、集客施策はなにも広告媒体に出稿する、ホームページをリニューアルする、営業に回ることだけでなく、工場の清掃をする、いらないものを撤去するなど、アクションプランを作るまでもなく、行動に移せる内容が多く出たことです。頭の中を整理した結果、すぐに行動に移せることがはっきりし、行動への準備が整ったのです。

(アクションプランシート)

 また、集客に対しての知識や情報が足りていない事で、施策の抽出が難しい時もありました。業界の特徴として、下請け体質が根強い中、新規の一般顧客へのアプローチを考える機会がなかったために、集客施策そのものが抽出できない。そのような場合は、選択肢の中から自社にあった集客施策
をチョイスして、その施策に対しての整理を行うという流れも進めました。
 また、組合活動の整理に関しては、事務局の方も組合員の方も積極的に関与いただき、一定のレベル感で整理できたと感じています。
 そして、アクションプランの実行における明確な期日と、達成基準となる具体的な目標設定の重要性についてもお伝えしました。業界における集客の取組は、緊急でないケースが多いためその2つを明確に定めないと実行性が乏しくなります。また、管理する人が自分以外にいることも、アクションプラン実行にあたっては非常に有効に働きます。これは同業者の集まる組合活動で十分にできることなので、全4回にわたり確認とディスカッションを繰り返しました。

 今後の事業展開・展望

 今後はまず各工場が集客に対して多くの情報を収集し、計画とそれに沿った実行、そして成果検証
と見直しといういわゆるPDCAサイクルをシンプルに実行しつつ、自社の強みを顧客に伝える術を身に着けていくことが重要です。また、組合独自の横の繫がりからの情報共有による各社の経営手法の見直しや、組合工場の連携による「組合員による共同集客モデル」も大きな可能性を秘めています。いままでの組合活動の柱である「相互扶助」の取組は単に共同購買やコンプライアンス順守の取組から「共同集客」という新たなステージの「相互扶助」への変革が必要となっているのかもしれません。
 自動車鈑金塗装業界は熟練した高度な修復技術が必要な業界でありますが、今後変化の激しい未来を各工場が生き残るためには、技術面だけでなく、集客はもちろん経営のイロハを身に着け、変化をいとわず、家業から企業へ転換していく事が必要とされているように思います。

(伊倉 大介)


『中小企業ちば』平成30年3月号に掲載 (※内容・データ等は掲載時の物です)

 

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