テーマ : 外国人を集客するためのイベント・コンテンツ

補助事業名 平成28年度連携組織活性化研究会
対象組合等 ユーカリが丘商店街振興組合
  ▼組合データ
  理事長 可児 憲之
  住 所 千葉県佐倉市ユーカリが丘3-2-1 山万サンサンビル105号室
  設 立 平成21年3月
  業 種 サービス業中心の異業種
  会 員 15人
担当部署 千葉県中小企業団体中央会 商業連携支援部(℡ 043-306-3284)
専門家 ガーデニング・コンサルティングオフィス 代表 伊藤 壮平

背景と目的

 ユーカリが丘商店街振興組合は京成本線ユーカリが丘駅を中心としたおおむね500mのエリアで営業している店舗・事業者で構成される近隣型商店街です。
 組合の設立は2009年(平成21年)ですが、前身の商店会時代より30年以上地域活性化や住民連携に寄与する各種イベントや、地域ボランティア団体と連携した防犯パトロール等の活動を実施してきました。
 近年のインバウンド(外国人訪日旅行)の高まりから、成田空港にほど近い立地としてユーカリが丘駅前のホテルへの外国人観光客の宿泊が増加傾向にありますが、宿泊する外国人がホテルから外出することは少なく、半ば「素通り」の状態ではないかとの認識を抱いています。これらの外国人観光客への街の魅力の周知に加え、2020年の東京オリンピックを見据え、ユーカリが丘地区自体の外国人観光客の集客策も合わせて検討を進めているところです。
 このことを踏まえ、今回の連携組織活性化研究会では「外国人を集客するためのイベント・コンテンツ」、「インバウンド対応におけるWi︲Fi、デジタルサイネージ等広告の有効活用手法」、「外国人観光客集客に活用できる補助金」について検討を行いました。

事業の活動内容

① 外国人を集客するためのイベント・コンテンツ

 日本政府は2013年に策定の「日本再興計画」で目標とした「2020年に訪日外国人2千万人」の目標を2016年に達成したことを受け、その後の「明日の日本を支える観光ビジョン」で目標値を2020年に4千万人、2030年に6千万人と倍増させました。また同時に訪日観光客の消費額を2020年に2015年の2倍超の8兆円、2030年に15兆円にする目標も掲げています。「インバウンド」というと欧米系の訪日外国人を連想することも多いですが、JNTO(日本政府観光局) の調べによると2016年の国別の訪日外国人数は隣国の中国・韓国・台湾・香港からが1 7 4 3 万人、シェア72.7%を占めており、タイ・マレーシア・シンガポール・フィリピン等の東南アジア地域を加えると約9割となります。2015年に中国からの訪日客が倍増し、韓国を抜いて世界一の訪日国となり、経済成長が続くアジア諸国の伸び率も高くなっています。中国人口13億人を勘案すると0.46%「しか」訪日していません。UNWTO(国連世界観光機構)が2015年に調査した外国人旅行者の渡航先国ランキングで日本は現在16位、アジアでは5位となっており日本のシェアの伸び代はまだまだ大きいということになります。
 合わせて観光庁「訪日外国人の消費動向」によれば訪日観光客の渡航における満足度は9割が「満足」「再訪意向」があり、リピーター化が期待されています。
 このことから最初は団体旅行で「ゴールデンルート」と呼ばれる東京―箱根―富士山―名古屋―京都―大阪といった所謂「超有名観光地」を回る旅から、個人手配による具体的な目的(スキー、温泉に入りたい、祭り、アニメ(聖地巡礼)、ラーメンが食べたい、酒蔵を訪ねてみたい、桜が見たい…)を叶える旅が増えてくることが予想されます。さらに旅行者が成熟してくることで郊外・地方の「普通の日本」が見たいというニッチ層の増加も予期されます。
 「普通の日本」とはいえ、訪日外国人を取り込むには日本人向けそのままではなくパッケージングが必要です。パッケージングの要素としては、外国人ウエルカムで安心でき便利な「受け入れ態勢の整備」、外国人目線の「わかりやすい発信」、SNSなどで伝播が期待できる「尖っているフック」を整備することで「外国人に伝わる」コンテンツとなり得ます。
 外国人集客に成功している先進事例として、岐阜県飛騨市の「SATOYAMA EXPERIENCE」(里山体験)、滋賀県守山市の「ビワイチ」(琵琶湖を自転車で1周)、中国路線が増加している富士山静岡空港が所在する静岡県牧之原市の歴史(浅間神社・久能山東照宮)と食(清水のマグロ)とコンテンツ(ちびまる子ちゃん、コスプレ)の複合的なパッケージングなどの取り組み事例を考察しました。

② インバウンド対応におけるWi︲Fi、デジタルサイネージ等広告の有効活用手法

 訪日外国人の一番の困っていることは自分のスマートフォンをインターネットに接続したいが、Wi︲Fiがどこにあるかわからないという点です。
 研究会ではWi︲Fiの設置手法について、アクセスポイントを街中に敷設する手法、人の集まるエリアに「点」として設置する手法、個々の事業者の事業者の回線を間借りして「面」として整備する方法を、メリット・デメリットを踏まえ検討しました。
 但しWi︲Fiの設置は、当たり前ですが設置すれば外国人観光客が増えるわけではなく、来訪動機の拡充、滞在時間の延長、回遊してもらう等、満足度向上のための施策という認識が重要です。
 一方デジタルサイネージの利点として
・書き換えが可能(ポスターのように張り替えコストがかからず限られたスペースで色々な情報を発信できる)
・状況に応じたコンテンツの出し分け(朝昼晩の時間帯、イベント時、閲覧者別など)
・インタラクティブ(タッチパネルを備えて見たいものを切り替えられる)であることが挙げられます。
 スマートフォンと連携してサイネージで知った情報を持ち歩くことや、より深掘りできるようにしたり、スマートフォンにクーポンを発券して店舗等に誘導することも可能です。SNSと連携して「街の掲示板」としての活用も可能です。またスマートフォンでは自発的に知りたいことを調べるだけ(知らないことは調べられない)ですが、サイネージではプッシュ的に、スマホでは調べづらい「とてつもないローカル」な情報を提供することが可能です。
 訪日外国人に向けてサイネージを整備するにあたり「外国人が必要な情報」が何かを認識する必要があります。一番のニーズは前述した「スマートフォンを利用するのに無料Wi︲Fiがどこにあるか」ですが、それ以外にも交通手段や飲食店、自分が知らない、気づかない情報との出会いを求めています。

③ 外国人観光客集客に活用できる補助金

 インバウンド対策として活用できる補助金として、国の施策では平成28年度補正予算「地域未来投資促進事業(商店街・まちなか集客力向上支援事業)」、平成29年度「地域・まちなか商業活性化支援事業」、千葉県の施策では千葉県地域商業活性化事業の「活性化実践事業」・「訪日観光客商店街おもてなし事業」などのスキームを検討しました。
 但し近年の補助金は、商店街の中長期の方向性の策定及び地域住民のニーズを懸案しコンセンサスを形成することが条件であることに留意が必要です。

 今後の事業展開・展望

 これまでもユーカリが丘商店街振興組合は、山万株式会社、ユーカリが丘商店連合会やNPO法人ユーカリタウンネットワーク等の地域団体と連携しながら、まちづくりの取り組みを継続的に実施してきました。インバウンド施策でもPDCAサイクルを回しながら、継続的改善の持続的な取り組みが肝要となります。

(伊藤 壮平)


『中小企業ちば』平成29年12月号に掲載 (※内容・データ等は掲載時の物です)

 

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