テーマ :買い物弱者支援のための「送迎用三輪自転車」の運行開始について

補助事業名 平成24年度商店街活性化対策事業
(がんばる商店街チャレンジ応援事業)(千葉市)
対象組合等 花見川団地商店街(振)
  ▼組合データ
  理事長 加賀田 彪
  住 所 千葉市花見川区花見川3-26-104
  設 立 平成7 年3 月
  業 種 小売業・飲食店中心の異業種
  会 員 31人(平成25年3月31日現在)
担当部署 千葉県中小企業団体中央会 商業連携支援部(℡ 043-306-3284)
専門家 Eマネージメント研究所 所長 江波戸 勝(中小企業診断士)

事業の背景と目的

 花見川団地商店街のある花見川団地は、昭和43年から入居が進み、すでに開発から40 年が経過している。
かつて団地内人口は3万人を数えたが、現在は1万5千人と半減し、65歳以上の高齢者は30%を超えている。特に分譲地区である花見川6丁目、7丁目では約40%と居住者の高齢化が進んでいる。また、高齢独身者世帯も多く、孤独死が年間10数名発生し社会問題化するなど、その人たちの見守りと日常生活の支援が切実な課題となっていた。
 このような状況から、商店街の役員や有志の中から高齢者の安心と見守りを考える機運が高まり、団地商店街に出来ることとして「買い物弱者支援」という視点から取り組むこととなった。

事業化を目指した研究活動

 事業化に向け商業アドバイザーの派遣を受け、昨年7月から11月までの5か月間延べ7回の研究会を行った。商店街では若手を中心とする5名からなるプロジェクトチームを編成し、アドバイザーを中心に話し合いを進めていった。
 アドバイザーからは、以下の4点を中心にアドバイスをいただいた。
① 買い物弱者支援にはどのような方法があるか。
② 各地の先進事例を整理し当商店街に可能とされる事業があるか。
③ 実施に当たっての留意点と取り組みの課題
④ 実施するにあたっての事業推進の手順
 特に、買い物弱者支援事業は、計画はするものの事業半ばで中断する事例が多くみられ、始めるからには事業を継続させることを前提に検討することとした。
 買い物弱者支援には大きく分けて別図の通り3つの取組みがあり、それぞれの特徴を理解するところから話を始め、結論を導き出していった。
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 「来街サポート」は階段・坂道の多い住宅団地や住宅地、遠距離住宅地からの来街を、車などを利用してサポートするもので、大型店では集客の一環として無料買い物バスの運行という形で行われている。
「宅配サービス」は来街出来ない買い物弱者に直接御用聞きなどをして注文を受け、注文を受けた商品を配達サービスするものである。大型店やコンビニエンスストアにおいてはネットや日常のチラシにより情報を受発信して配達サービスを行っているが、コストがかかりすぎ、コスト削減が課題となっている。
 「出張販売」は来街しにくい買い物弱者の所へ商品を搬入展示することによって、商品選択の楽しみと購入の利便さを提供するものである。これも一部のコンビニアンスストアやみやのかわ商店街などで実施されているが、採算性にやや課題があることが理解できた。
 これらの取組みについて、プロジェクトのメンバーで採算性、継続性や他の商店街メンバーからも納得が得られる事業は何かを話し合った結果、当商店街で継続して行えるものとして「来街サポート」を選択し、先進事例として武蔵村山市の村山団地中央商店会を視察した。
 この事業により、地域の高齢者を中心とする買い物弱者の皆さんの買い物の負担を軽減するばかりではなく、買い物の楽しさとふれあいの喜びを感じていただき、住民と商店街の距離をより近づけることを期待して取り組んだ。もちろん、その結果として、商店街への来街者が増え、個々の商店の売り上げ増加につながることも期待している。

具体化に向けた取組み

 プロジェクトチームでは、これまでの検討結果を踏まえ、必要資金を見積もり、商店街側の自己負担分について理事会で承認を得るとともに、送迎用電動アシスト付き三輪自転車の製作に向けて具体化するべく関係部署に相談にいった。
 警察には製作する自転車の概要を説明して道路交通上問題のないことを確認し、市には商店街補助金の対象として支援してもらうべく伺い、了解をいただいた。
25-08-2 送迎用自転車製作に当たっては、競技用車いすメーカーとして有名な市内のオーエックスエンジニアリング社に製作を依頼し、先進事例を視察した際に受けた先方からのアドバイス内容を伝え、設計上の参考に供した。
 一方、今後の運営に当たっては、商店街メンバーや自治会役員、民生委員などの方々に趣旨説明を行い、事業の運営に理解と協力をお願いした。また、自転車の運転をしていただく方を有償ボランティアとして募集することとした。
この自転車の特徴は、三輪とも20インチの車輪を使用しており、運転がしやすいこと、部材のほとんどが新幹線でも使用されている特殊アルミのパイプで出来ており車体が軽いこと、全体的にコンパクトにまとめられていることなどが挙げられる。

事業の実施状況と今後の展望

 送迎用自転車のお披露目は2月9日に行った。当日はNHKのテレビ中継が行われ、地域住民の注目度も一気に高まり、懸案であった自転車の運転者も5名あらわれ、送迎サービスをスタートさせることができた。
運行は水・日曜日を除く毎日11時から16時の間で途中休憩をはさみ1日4時間の稼働で、運転者には謝礼として2時間当たり千円の商店街商品券をお渡ししている。
 利用者は1日当たり5名から20名程度とばらつきはあるが着実に増加している。住民からの直接依頼はまだ少ないものの、買い物を済ませたお店からお客様をお送りするよう依頼があるなど、地域に定着しつつある。
 今後とも、地域の高齢者が商店街でのお買い物を楽しみながら、いつまでもいきいきと生活できるようサポートしていきたいとのことである。(江波戸 勝)
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『中小企業ちば』平成25年8月号に掲載 (※内容・データ等は掲載時の物です)