テーマ : 来店客を増やす米穀店の工夫

補助事業名 平成30年度連携組織活性化研究会
対象組合等 千葉県米穀小売商業組合
  ▼組合データ
  理事長 山崎 政治
  住 所 流山市流山2-312
  設 立 昭和60年9月
  業 種 米穀小売業
  組合員 117人
担当部署 千葉県中小企業団体中央会 商業連携支援部(℡ 043-306-3284)
専門家 ゼネラル マネジメント オフィス
代表 佐藤卓(中小企業診断士)

背景と目的

 流山市に組合事務所を置いていますが、千葉県内の米穀小売店が組合活動に参加しています。お米は日本国民の主食であり、米穀小売店は法律で保護されて安定した経営を行ってきました。しかし、平成十六年の法改正で流通が自由化されて以来、厳しい競争状況が続いています。
①減少するお米の消費量
 お米の年間一人当たり消費量を農水省が毎年発表しています。昭和三十七年の一一八㎏をピークに下がり続け、平成二十八年度では半分の五四㎏に下がってしまいました。それでもお米が中心の食生活ではありますが、パンやめん類に主食の一部が置き換わっていることは確かです。さらに、近年は健康志向が強まっており、主食そのものの消費が減っています。減少を続けるお米需要を食品小売店が取り合う状況が長年続いているのです。そこに産直が参入してきました。量的に無視できなくなっているのがネット販売です。特に生産者の直販サイトには人気が集まっています。農産物直売所と道の駅も消費者が利用し始めた直販のスタイルです。お米屋さんにとっては受難の時代となってしまいました。
②価格を重視しスーパーで購入
 お米の産地ではいわゆる「ブランド米」を売り出す傾向が近年高まっています。話題となれば確かに一時的には売れることは確かです。しかし、お米は日本人の主食ですから、毎日食べるお米に関しては、米穀安定供給確保支援機構の調査が示すように、七割五分が価格を重視して購入していることが分かります。同じような値段であれば、ブランド米を購入しています。購入する場所もスーパーが中心です。お米屋さんでの購入は全体の一割に遠く及びません。この流れを大きく変えることはできませんが、二割以上いると思われる安全性や鮮度を重視する消費者をお米屋さんが集めることは決して不可能ではありません。
③お米マイスターで需要喚起
 千葉県の米穀小売商業組合では、お米の消費量を増やすために安全で鮮度が高いお米を比較的安く提供する共同購入事業を積極的に実施しています。それ以上に力を入れているのが「お米マイスター」です。お米のこだわりをお客様に伝える伝道師です。日本米穀小売商業組合連合会が主宰するお米の博士号ともいえる資格です。千葉県の商組では、積極的に取得を薦め、取得者を対象に毎年研修会を行っています。マイスターの中には小学校等で講師を勤めている方もいます。お米マイスターがいる店のリストをネットでも公表していますが、一般消費者には馴染みが薄い資格であるため、それだけでは集客力はそれほど強くありません。「お米を買うならお米屋さん」と言っていただくためには、お米屋さんとして更にもうひと工夫が必要となります。昨年度の研究会で検討した内容の一部を紹介させていただきます。


事業の活動内容

①専門店の良さを伝える工夫
 お米の購入は一ヶ月一回程度ですから、お米屋さんに「何かないかな?」と寄ることはほとんどありません。しかし、農林水産大臣賞を受賞した東京都内の小さなお米屋さんが、大正時代に建てられた古い店舗をリニューアルして通行人が立ち止まる店を作ってしまいました。昼間はあまり目立ちませんが、夜になるとライトアップして木造のお店がお客様の目を惹きつけます。店を覗くと稲の生育状況がイラストで示されていたり、お米のこだわりがPOPで表示されたりしています。店の奥には書籍や雑貨まで置いてあります。買物の用事がなくても思わず入ってしまうお店です。昔の道具類も楽しませてくれます。一㎏単位でその場で精米してくれることも明記されていますので、「今度買うときはこの店に来よう」とお客様に思わせてしまいます。
②買いに来たくなる商品づくり
 「今度買うとき」というのは曲者です。そのお客様はいつ来るか分かりません。今日何かを買ってもらわないと「今度」には繋がりません。前掲のお米屋さんも含めて、若い店主がいろいろな試みを始めました。東京都内のこちらも小さなお米屋さんです。お米をキーワードにして、お客様が直ぐに食べることができる手づくりの加工品を提供しています。定番はお赤飯です。炊き込みご飯もあります。季節に合わせておはぎやお餅も製造販売します。現代社会では忘れられようとしているおばあちゃんの味を子供達に伝えようとしています。昔の味ばかりではありません。米粉を使ったシフォンケーキ等のスイーツまでも商品化しています。直ぐに食べることができる商品があればお客様は気軽に寄ってくれます。お米はそのついでに買って下さることになるのです。
③来店を促すSNS販促
 品揃えや店舗を工夫すれば通行人がお店に入りやすくなります。しかし、離れたところにいるお客様に来ていただくことはできません。それを可能にするのがSNSでしょう。大正の建物で人目を集めるお米屋さんに訪れるお客様の中には外国人も多いです。ライトアップした建物をそのお客様がご自分のSNSでPRしてくれます。稲の生育状況は英語でも説明していますのでSNSで拡散しています。極めつけは「おむすび」です。お客様においしいお米を気軽に食べていただくことを目的に自家製造しています。ショーケースの横には使用しているお米の銘柄と産地の説明書きがあります。「おむすび」情報がSNSで拡散し、来店客を更に増やしています。

今後の事業展開・展望

 お米屋さんにわざわざ来ていただくためには、お客様に楽しんでもらうことが必要でしょう。「お米のミニテーマパーク」でも良いではないですか。
□生産者限定新米予約販売
□おかずに合わせてお米の提案
□生産者からのプレゼント
□お米屋さんの「おむすび」
□日本各地のごはんのお供
□五平餅焼いちゃいますか
□日本全国棚田米食べ比べ
□お米で味わう日本漫遊記
□米+雑穀で健康生活提案皆さん!テーマを決めてレッツトライ!

(中小企業診断士 佐藤卓)


『中小企業ちば』令和元年6月号に掲載 (※内容・データ等は掲載時の物です)

 

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