テーマ :組合員の経営力向上を目指した新たな組合事業の構築について

補助事業名 連携組織活性化研究会
対象組合等 千葉県自動車車体整備協同組合
  ▼組合データ
  理事長 鈴木 正一
  住 所 佐倉市宮本字手洗 199
  設 立 昭和 58年 3月
  業 種 自動車一般整備業
  会 員 171人
担当部署 千葉県中小企業団体中央会 工業連携支援部(TEL043-242-3277)
専門家 野々上総合研究所 所長 野々上 寛(中小企業診断士)

背景と目的

 自動車業界は、自動車平均保有年数は上昇しているものの、新車販売台数の伸び悩み等により、国内自動車保有台数が徐々に減少、市場がゆるやかに縮小している。
  また、自動車の安全性向上等による事故の減少、趣味・ステータスから単なる移動手段といった消費者意識の変化に伴い、自動車整備に対する需要も減少傾向にある。
  一方、次世代自動車や高度道路交通システム(ITS)搭載車両等の新技術への対応、大気汚染防止法改正に伴う揮発性有機化合物(VOC)の排出抑制に向けた自主的な取組み等、経営環境の変化に伴い、対応すべき課題も山積している。
  このような状況の中、組合員企業の規模も様々であり、千葉県自動車車体整備協同組合として最適かつ効果的な支援策が何であるのか見出せていないのが現状である。
  そこで、今後の組合事業の方向性を策定することを目的として、平成22年度には連携組織活性化研究会、平成23年度には新分野開拓支援事業を実施することとした。

事業の活動内容

  今後の組合事業の方向性を策定するためには、外部および内部環境を把握し、組合員企業の経営課題を認識することが重要である。そこで、今回の事業では、環境を把握することに注力した。


【1】外部環境の把握

 まずは、自動車業界および自動車整備業界に関する外部環境の分析を行った。
  その結果、前述のような環境変化等に伴い、消費者は自動車そのものに金をかけなくなっており、鈑金・塗装についてもよりリーズナブルなサービスを求めるようになっていることが分かった。しかしながら、短期的には単価は低下するものの、自動車平均保有年数の上昇、ドライバーの高齢化等により、受注数自体は一定規模を確保できることが予測される。一方、次世代自動車やITS搭載車両が増加しており、従来の技術では、対応できない修理や鈑金技術を必要とするケースもあり、整備メーカー系列以外の鈑金事業者では対応できないものがでてくることも予測され、長期的には厳しい環境となっている。 23-12-1

【2】内部環境の把握

23-12-2 続いて、内部環境把握のため、組合員企業の経営者を対象として平成22年7月にアンケートを実施し、49社から回答が集まった。アンケートに回答した組合員企業の事業内容は、図2のとおりである。主に「鈑金・塗装」を営んでおり、「車検・点検整備」、「保険代理店」、「新車・中古車販売」といった川上事業をあわせて実施している事業者が多い。  アンケートには、47の設問を設定し、設問に対する回答内容を、①経営戦略、②営業戦略、③技術力、④人材育成・風土、⑤法令等への対応、⑥生産管理、⑦ITの活用状況、⑧変革意欲 の8つの評価項目で精査・分析した。
  なお、アンケートのみでは企業実態が正確に把握できないことから、補完目的として10社程度の企業ヒアリングも実施し、情報修正を行っている。
  全体的な傾向としては、比較的技術面を強みとしている事業者が多い。一方で、環境変化への対応力は非常に弱く、また、経営計画を策定・実行している事業者は極めて少ないことが分かった。

事業の成果

  外部および内部環境の分析の結果を踏まえ、千葉県自動車車体整備協同が的に取り組むべき事業の方向性として、
  【1】経営変革意欲を高めること
  【2】事業領域を拡大または収益性の高い分野へシフトすることで経営基盤の強化を図ること
  【3】環境変化に対応するための技術・設備・生産体制を効果的に構築すること を提案した。なお、それらは各事業者のネットワーク構築につながるものであることが望ましいと考える。
  具体的には、組合員の経営力向上に寄与できる事業として、①売上拡大、②生産性向上、③技術力向上、④新技術への対応、⑤組織活性化、⑥マネジメント力向上、 ⑦法令対応の7つの切り口において具体的な施策案を提案している。なお、施策案については青年部の要望反映したうえで作成している。
  また、組合員企業に対しては、平成23年度の新分野開拓支援事業の中で報告会という形式で、「業界の現状と動向の把握」、「組合員の現状(アンケート結果)」、「組合事業の方向性」について説明を行った。

今後の事業展開・展望

  平成22年度の連携組織活性化研究会で提案した実施項目は多岐にわたっており、全てを一気に実施できるものではない。また、組合事業についてのベクトル自体がまだ一致していないのが現状である。まずは、本事業での提案をたたき台に千葉県自動車車体整備協同組合と組合員企業が議論を深め、方向性を定めたうえで事業を進めていくことが重要である。
  なお、事業を進めるにあたっては、次の2点に留意が必要である。① 近視眼的なもののみに注力せず、長期的な業界展望に対応した事業も提供すること② 現在、千葉県自動車車体整備協同組合が掲げる千車協ブランドという将来ビジョン実現に必要な項目を優先して実行すること
  本事業が、組合員企業の意識改革に寄与し、組合事業が組合員企業の経営力向上に貢献できるものになることを期待する。(中小企業診断士 野々上 寛)


『中小企業ちば』平成23年12月号に掲載 (※内容・データ等は掲載時の物です)