テーマ : シズル感あふれる店づくり

補助事業名 平成26年度連携組織活性化研究会
対象組合等 久留里商店街振興組合
  ▼組合データ
  理事長 鳥井 正俊
  住 所 君津市久留里市場861
  設 立 平成 6 年 3 月
  業 種 小売業、飲食店中心の異業種
  組合員 49人
担当部署 千葉県中小企業団体中央会 商業連携支援部(℡ 043-306-3284)
専門家 株式会社ラフィネット総合企画 代表取締役 水井 澄人

背景と目的

 久留里商店街振興組合は、その中心地、久留里市場に位置する商店街です。久留里は、室町時代中期に上総の戦国大名武田信長氏によって久留里城が築城されたというほどその歴史も古く、久留里市場は、永年この地で商店街を形成して来ました。現在は鳥井正俊理事長を中心に、久留里商店街の活性化を願って、定期的に組合としての勉強会を行う等、大変に積極的な活動を行っています。
 その中で、今回商店街の研修を行うに当たって、鳥井理事長に指摘させていただいた問題点は、以下のような点でした。
 ① 各店とも店づくりに対して、売る側の視点からしか店づくりを行っていない為、外観力が極めて乏しいものとなっている。
 ② どの店も季節感が全くというほど感じられない。また各店とも外に向かっての提案性や情報発信性が感じられない。
 ③ POPについては、ほとんどの店でつけられていない。
 ④ 今やギフト関連は、大きな販売モチベーションにも関わらず、どの店もギフト演出がされていない。
 この課題を前提に、久留里商店街における「シズル感あふれる店づくり」の実現を目的とした研修を行う事としました。

事業の活動内容

 ①第一回研修会

 ▽ 研修テーマ「売れる店舗と商品演出の法則」
 お店づくりの基本的な考え方について、他の地域の成功事例を中心にスライドを使い、具体的に説明を行いました。その中で、今の商店街は、経営者の高齢化や後継者問題、また大型店の出店等さまざまな問題があり、経営に陰りを見せているのも事実ですが、私が考える個人店の一番の問題点は、「消費者ニーズの変化に対して、全く対応出来ていない」という点です。これはある意味、久留里商店街にも言えることでした。
 消費者は、この20年、30年の中で、そのニーズがどんどん変わって行っているのにも関わらず、個人店に行くと20年前、30年前と何ら商売のやり方が変わっていないのです。
 例えば、今は「コトを売る時代」と言われて久しいのに、今だに「モノ売り中心」の店がほとんどです。また、お客様は明るくて、きれいで開放感のある店が好きなのに対して、現実はウインドウや窓ガラスに所狭しとビラやポスターを貼りめぐらしている暗くて、汚なく、入りづらい店が多いのです。商店街へ行って、そんな店ばかりだとしたら、その商店街に二度と行きたくなくなるのは当然の消費者心理でしょう。
 今回、久留里商店街の研修において、終始一貫して言い続けたことは、「シズル感のある店づくり」を実現するということでした。
 シズル感とは、お客様の五感を刺激して、欲求心を高めることです。実はこのシズル感のある店づくりこそが、お客様が入って見たくなる店につながるのです。その中で重要なポイントとなるのが、次の四点です。
 まず第一には、ファサードづくり。このポイントは季節感あふれる装飾演出でしっかりとした店頭を作ることです。
 二つ目のポイントは、シズル感あふれるコメントのPOPを店内に設置することです。
 三つ目のポイントは、OPP袋や箱を使ったギフト提案を店内で演出することです。
 そして四つ目のポイントは、お客様をリピーターにする独自の看板商品を作ることです。
 このような点を踏まえて、研修では、久留里商店街の各店が「シズル感あふれる店づくり」を目指していくために、何をしていったらよいのかという理解が深まりました。

 ②第二回研修会

 ▽ 研修テーマ「購買意欲を促進するシズルPOPの作り方」
 第二回の研修では、それぞれの店から持ち寄った商品を題材に、シズルコメントPOPの作り方について、ワークショップ形式で実施しました。はじめは皆さん思うようにコメントが出来ずにとまどっていましたが、最後には全員がシズル感あふれるPOPが作れるようになりました。
 またPOP同様にとても重要なポイントとなるのが、ギフトによる演出です。現在のただ商品が並んでいるだけというモノ売り中心の店から、季節感あふれるディスプレイやギフト提案のある店へと変えていくことが、店づくりには大切なのです。
 研修終了後、全員で商店街に入り、食料品店、衣料品店、日用雑貨店の三店舗をモデルに、実際にOJTによる店舗指導を行いました。

 ③第三回研修会

 ▽ 研修テーマ「お客様をリピーターにする看板商品の作り方」
 個人店に来るお客様の9割以上は何らかの目的をもって来店しています。すなわち、目的買いのお客様です。だからこそ、その目的買いに対応して、自分のお店の「独自の商品や技術・特技」といったものをひとつ特化して、お店の看板商品として外に向かって発信していくことで、お店の魅力が高まってきます。
 看板商品を作る際に、現在売れている商品を看板商品としても、それはどこの店でも売れている商品なので、看板商品としての特徴は出しにくくなります。看板商品化する際のポイントは、お店としての「売り筋」、すなわち自分の店で力を入れて売っていきたい商品や独自に開発した商品を特化していくことで看板商品に変わって行きます。
 そして看板商品の作り方は、大きく二つに分けることができます。
 一つ目は開発型。これは、食料品や料理の場合に適しています。それも現在あるものを、アレンジしたり、味を変えてみることで新たな看板商品となり得ます。
 二つ目は発掘型です。これは非食品に向いています。この場合は、技術や修理、サイズなどといったものを特化して、看板化すると成功率が高くなります。
 このような視点から久留里商店街各店の看板商品の作り方についてのアドバイスを行いました。

事業の成果

27-06-01 久留里商店街において、今回の研修に対する期待度は大きいものがありました。特に各店の奥様たちが中心で研修を行った中で、この研修をきっかけに、店の考え方を変えていきたいという意気込みが感じられました。
 実例として、第二回の研修で行った店舗指導でアドバイスを受けた衣料品店さんは、早速ウインドウに貼ってあったビラやチラシを全部剥がして、ウインドウを磨き、外からの視認性を高めました。
また、食料品店さんでは、乱雑になっていた店頭の雑材を片付けファサードをすっきりさせました。さらに日用雑貨店さんでも、店内のPOPをシズル感のあるものに作り替える等、研修で学んだことを着実に自分の店に反映して行きました。
 その中で、今後久留里商店街が活性化に向けて、継続して取り組むべき課題は、「シズル感あふれる店づくり」の実現です。
 各店が今回の研修で学んだことを具体的に実践し、常にお客様サイドに立った商売に転換できるかと言うことです。久留里商店街として、このような考え方を具現化した時にこそ、今以上に魅力のある商店街に生まれ変わることが期待出来ます。(水井 澄人)


『中小企業ちば』平成27年6月号に掲載 (※内容・データ等は掲載時の物です)