テーマ : キャッシュレスを販売促進に活かす!小企業者のための決済セミナー

補助事業名 令和元年度小企業者組織化特別講習会
対象組合等 千葉県内会員小企業者組合259組合(R2.5.31現在)
・事業協同組合 181組合
・協業組合 5組合
・協同組合連合会 4組合
・商工組合 9組合
・企業組合 46組合
・商店街振興組合 14組合
担当部署 千葉県中小企業団体中央会 商業連携支援部(℡ 043-306-3284)
専門家 株式会社にぎわい研究所
代表取締役 村上 知也(中小企業診断士)

売上は上がるのか?

 昨年の消費税率引き上げのタイミングで、消費者に5%還元する施策が打ち出され、日本のキャッシュレス化は盛り上がりました。お店を運営する中小事業者の皆さんも「キャッシュレスに対応しなければならないのでは」と悩んでいるのではないでしょうか。一方で、キャッシュレスは、種類が多く、何にどのように対応していいかわからず二の足を踏んでいる方も多いです。
 また、キャッシュレスを導入しても、売上が上がるのかわからないので導入に踏み切れないお店も多いのではないでしょうか。 一つ言えることは、キャッシュレスを入れても売上は大して上がりませんが、今後は、キャッシュレスを入れていないと売上は下がる可能性があります。日本クレジットカード協会「キャッシュレス社会の実現に向けた調査報告書」によると、32%のお客様が、「キャッシュレス対応してないお店を避けたことがある」と回答しています。キャッシュレスを使い出した消費者は、今回のコロナ禍もあって、現金を使いたがりません。お店がキャッシュレスに対応していなければ、次から来てもらえない可能性がありますので、この機にぜひ、対応をしましょう。

お店の効率は高まるのか?

 それでは、キャッシュレスでお店の業務効率は高まるでしょうか? 仮に世の中の現金の利用がゼロになると、お店の効率化は劇的に進みます。営業時間中にお釣りの受け渡しが発生することがありませんし、お店が閉店した瞬間にレジ締めは完了しますし、閉店後に売上と現金の差異をチェックする必要もありません。野村総合研究所のデータによると、店舗あたりの現金業務にかかる時間は1日あたり80分程度とされます。 ただし、全面的なキャッシュレス化が実現するのはまだ先の話です。政府ですら、4年後に、ようやくキャッシュレス比率40%を目標としています。当面は現金とキャッシュレスの併用が続くでしょう。
 さらに、キャッシュレスの現状を見ると、レジとの連動性が低い運用をしている店舗が多くあります。例えば、会計時に昔ながらのメカレジを打って計算し、その後キャッシュレス端末でも価格を打って、通常のレシートと、キャッシュレス明細を2枚出しているような店舗のことです。完全に二度手間です。効率を高めるにはせめてキャッシュレスとレジと連動しなければなりません。キャッシュレスの導入は手間がかかるものですが、将来の効率化のためにも、今から準備を進めておきたいです。

キャッシュレスの種類

 キャッシュレスと言っても、クレジットカード、電子マネー、スマホQR決済と複数の手段があります。今後はどの決済手段が増加するでしょうか。現時点ではクレジットカードと電子マネーの普及率が高くなっています。近年、鉄道を利用する人はほとんどの人が電子マネーを持っていますし、郊外に住む人達も、総合スーパーの電子マネーを持っています。一方でスマホQR決済は伸びたものの、まだシェアは高くありません。
 消費者は複数の手段をどのように使い分けているのでしょうか。 これは利用する単価を見ると一目瞭然です。高単価なお店ではクレジットカードを使い、低単価な買い物では電子マネーを利用しています。クレジットカードは今でも署名を求められることがあり、ちょっとした買い物で使うのは面倒という印象があります。一方電子マネーは、交通系電子マネーはプラスチックカードに入れるのは2万円までと、入金できる上限に制限があり、高額な買い物に向いていません。 そういった意味では、スマホQR決済は低額から高額までをカバーできる可能性があります。スマホ決済は、この1~2年で急速に普及すると考えられており、近い内に電子マネーに匹敵するという予測もでています。

どのキャッシュレスを選ぶか

 それでは、「クレジットカード」、「電子マネー」、「スマホQR」の決済のうち、お店側は何に対応していけばいいでしょうか。できれば、多くの決済手段に対応したいですが、すべてを揃えるのも難しいものです。消費者としては電子マネーで高額支払えるようになるのが一番メリットはあります。クレジットカードは署名、スマホQR決済はアプリを立ち上げるという手間がありますが、電子マネーにはありません。ピッ!とタッチするだけで決済できるのがユーザ体験としても一番しっくり来ます。
 では、お店側も電子マネーがいいかというと悩ましいところで、お店の視点としては最重要なのは、決済手数料ではないでしょうか。そうすると現状で手数料無料のものがあり、将来的にもクレジットカードや電子マネーの手数料を下回ると考えられているスマホQR決済が有力です。

今後のキャッシュレス

 キャッシュレス還元制度は今年の6月で終了しましたが、今後はマイナンバーを使った還元制度が9月からスタートします。コロナ禍からの経済対策としてさらにキャッシュレスの活用を支援する施策が実施されることも予想されますので、お店としては対応できる準備を進めておきましょう。

コロナ後の対応に向けて

 さらに飲食店等では、キャッシュレスだけではなく、お客さまのスマホで頼むモバイルオーダーや、テイクアウトアプリも急速に普及が進んでいます。注文と会計の両方でのデジタル化をすすめ、コロナ後における非対面型のビジネスモデルへの転換を進める必要があるでしょう。
 小売業では、ネットショップの対応も求められています。ネットショップもキャッシュレスであり、非対面型のビジネスモデルです。
 今後、さまざまな業種でビジネスモデルの転換が求められ、実現するためにはデジタル化がどうしても必要です。コロナ後の世界で生き残っていくためのデジタル化は必須だと言えます。
 しかし、大手のライバル店も必ず対応してきます。キャッシュレスやデジタル化だけでは差別化できるわけではありません。本質的サービスである接客や商品力をアピールする事も忘れないでほしいと思います。

(中小企業診断士 村上 知也)


『中小企業ちば』令和2年7月号に掲載 (※内容・データ等は掲載時の物です)

 

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