テーマ : 特定親事業者依存度の縮小、取引先分散、自立化など 中小製造業の新しい方向性

補助事業名 平成28年度連携組織活性化研究会
対象組合等 送変電機器千葉協同組合
  ▼組合データ
  理事長 菊池 康文
  住 所 千葉県市原市八幡海岸通7 富士電機㈱千葉工場内
  設 立 平成4年3月
  業 種 電気機械器具製造業
  会 員 13人
担当部署 千葉県中小企業団体中央会 工業連携支援部(TEL 043-306-2427)
専門家 江塚経営研究所 江塚 修

背景と目的

①中小製造業の経営環境変化
 「中小ものづくり企業」は、高度成長期以来、親事業者と「ピラミッド構造」を構成し長期安定的な受注構造を形成していました。
 しかし、わが国大手製造業のグローバル化や国際競争力強化などで、中小ものづくり企業の受注構造は大きく変化してきました。
②当組合の経営環境変化
 中小製造業である私たち「送変電機器千葉協同組合」各社も、同様に大きな変化の中にいます。
 私たちは、平成4年に富士電機千葉工場の送変電機器関連協力企業が設立しました。(現在13社)
 当時はまだ「ピラミッド構造」で、組合の会合などには親事業者富士電機も参加する時代でした。
 しかし、平成14年10月には富士電機の送変電機器部門は、日立製作所、明電舎の3社で「日本AEパワーシステムズ」という合弁会社に統合することになり、親事業者が3社に増加しました。
③今回の活性化研究会の目的
 経営環境の大きな変化、および当組合親事業者の変貌は、各社に受注構造変化に対する積極的対応を迫っています。
 今回の研究会の事業目的は、中小製造業の環境変化への積極的な対応を検討し、その施策を実行しながら、今後組合員同士の連携等により、各社の受注力を強化することです。

経産省「ものづくり白書2013 年」をもとに信金中央金庫作成

事業の活動内容

 今回の事業は、中小製造業の今後のあるべき方向性の検討、および先進他社の事例の研究です。
①中小製造業の方向性=4類型
 下請製造体制が大きく変化する中、ものづくり企業の取るべき方向は、以下の4つに集約されます。
「地位確保型」「下請深化型」「下請自立混合型」「独立自立型」
② 地位確保型、今後の方向性
 取引先拡大や自立化が時期尚早の事業者がこの型で、背伸びせず、親事業者との関係を重視します。
 この場合、下請構造が変化しており、成行き任せは自社地位が下がるために、次のような事業強化策で「地位の確保」を目指します。
◆親事業者と従来以上情報交流
 担当者と年2回程度の情報交流会開催など定期的な会議を設営
◆「価格交渉」の重視
 価格交渉時、互いの情報、客観的事実、推移などを重視
 下請企業は「価格交渉サポート事業㊟」でスキルアップ
◆価格交渉時コスト削減策共有
 親事業者事業動向を参考に、共同でコスト削減方針決める
◆長期ビジョンや経営計画を策定し競争力等を強化

㊟ 価格交渉サポート事業
ノウハウハンドブック

③ 下請深化型の方向性、事例
 地位確保型からのランクアップは下請深化型です。この型は親事業者の信頼が厚く、下請企業群のリーダー格や親事業者と協働強化になります。目指す姿は次の通りです。
◆下位下請などの部品統合業務
◆納入アイテムの拡大
◆設計参画や親事業者と海外進出
 事例研究…A社(松戸市)
◆ 概要~従業員39人、金属部品板金加工、建機会社に部品供給
◆従来の下請状況
 大手建機会社下請企業で一時は数社へ納入していたが、親事業者から要請あり、1社下請に戻る
◆リーダー格になった施策
 高品質かつ安定出荷し信頼があったため、親事業者から部材アイテム拡大要請あり。当社も応じ、経営革新計画で1億円を投資し自動機器(棚付タレットパンチプレス)を設備し、受注アイテム拡大を実施、下請グループのリーダー格に。

購入した自動機器
棚付タレットパンチプレス

④下請自立混合型の方向性、事例
 この型も地位確保型からの改革型ですが、親事業者の同業他社や異業種への販路拡大型です。
 推進ポイントは次の通りです。
◆親会社の了解や理解、など合意
◆親会社への十分な配慮
◆新規開拓のための十分な別対策
 事例研究…B社(八千代市)
◆ 概要~従業員10人、鋳造品切削加工、射出成形機部品を供給
◆従来の下請状況
 大手重機械メーカー100%だったが、精密加工に強みがあり異業種やその他に販路拡大。
 販路拡大は「試作品受託業務」に進出し、親会社だけでなく新たな受注先を新規に確保した。
◆新規開拓をすすめた施策
 高い鋳造品切削加工技術を活用し試作品受注できるように経営革新計画を活用し、借入金により新規設備導入、試作品受託業務開始設備は三次元測定機、新NC旋盤。および測定機室などで、新規開拓は、ネットを活用。
 この効果は高く、従来の親事業者向け受注低下時も、他社受注で業績は維持されている
⑤ 独立自立型の方向性、事例
 「自立化、独立化」は中小製造業究極の目標です。
 ポイントは次の通りです。
◆製品を汎用化し自立販売
◆企業連携で「集団で独立」
◆「試作品」など技術特化する
 事例研究…C社(茂原市)
◆概要~従業員35人、高機能金属圧延加工、希望サイズで販売
◆従来の下請状況
 従来大手企業が材料持込し加工賃商売(下請)を新たに自社で高機能材料を仕入し、圧延加工の上希望サイズ販売する事業に転換
◆事業転換をすすめた施策
 低膨張合金等高機能材料は大手でも仕入れが難しくなり、当社でワンサイズ仕入し圧延加工の上希望サイズで販売する好機となった。
 そのため経営革新計画を活用し設備増強を行った。設備は可逆式四段圧延機などで、ワンサイズ材料を容易に加工する設備を備えた。
 効果は抜群で、大手メーカーも最終サイズで購入でき好評、当社も利幅大幅向上し業績アップに。

 成果および今後の事業展開

 今回の活動による紹介事例は、いずれも経営革新計画を活用し、大きな資金調達により従来事業を大胆に改革したもので、私たちにとって大変参考になりました。
 大きな経営環境変化を乗り越えていかなければならないいまこそ、親事業者との関係を見つめ、自社の「強み」を活かす新たな「経営改革」の好機と思われます。
 経営革新制度、経営強化法、中央会などの支援機関、などを有効に活用して私たちの事業をさらに強化していきたいと考えます。

(江塚 修)


『中小企業ちば』平成29年5月号に掲載 (※内容・データ等は掲載時の物です)

 

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