【答】
ポイント ★原則として理事(会社)と組合の契約は自己契約、理事会承認が必要 ★自分の利益をはかる余地がなければ承認不要
法律は、理事が組合と契約する場合を「自己契約」とし、理事会の承認事項と定めています。
この規定は、理事個人と組合の契約だけでなく、理事会社と組合の間の契約にも適用されます。理事長(会社)の場合には、民法の双方代理にも抵触します。組合の代表者と会社の代表者が同じ人間になり、自分が自分と契約することになるのです。この民法の双方代理の契約も理事会の承認があれば有効に成立します。
なぜ、このような規定があるのでしょうか。その理由は、理事が自分の利益のために組合・組合員に損害を与えることを防ぐためです。ですから、損害を与える心配のない契約であれば、理事会の承認は不要と解されています。(※組合法第三十八条参照)
例えば、共同購買事業を理事が利用するとします。不当に安く組合から買えば問題ですが、一般組合員と同じ価格で共同購買事業を利用するのならば、理事会承認は不要でしょう。自分の利益をはかることはできないからです。
理事会承認の要・不要の境目は、理事が自分の利益を追求できるか否かにあります。契約の内容が、定型的で料金、条件等が確定していて、自分の利益をはかる余地のない共同購買のような取引であれば理事会承認は不要なのです。
しかし、実際には微妙です。共同購買事業の利用であっても希少価値のある商品の場合には、理事会の承認を得たほうがよいかもしれません。
レコード店の組合が人気タレントの新曲を共同購買するとします。組合員全員が望む枚数を入手できるなら自己契約の問題は発生しません。しかし、このCDの仕入枚数が少なく、理事が自分の店に優先的に配分する可能性があるならば、自己契約が問題になるでしょう。共同購買でも、その態様によっては理事会承認が必要な場合も出てくるわけです。
自衛隊などの官公庁からの仕事を受注する組合の多くは官公需適格組合になっています。適格組合になるためには、共同受注規約、配分基準などを厳格に規定しなければなりません。その規定にのっとって理事が配分を受けたということであれば、理事会承認を得る必要はないと考えられます。しかし、自己の利益をはかる余地が少しでもあるならば理事会承認を得ておくほうが賢明だと思います。
平成十八年の法改正で、理事会承認後も重要事項を理事会に報告することとされました。
(中小企業組合理事のためのQ&A/清水透著・2010年5月(新訂)第1版第1刷発行より転載)
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