【答】
中小企業等協同組合法第5条の基準及び原則には、協同組合は組合員の相互扶助を目的とすること。の次に「組合員が任意に加入し、又は脱退することができること」。と明記されている。 以下これについて述べる。
加 入
■加入の意義 組合への加入とは、組合設立の場合に、組合員資格を有する者が組合員となることをいうのではなく、組合成立後において、組合員資格を有する者が組合員となることをいう。 加入は、組合と組合に加入しようとする者との間で結ばれる契約であり、加入しようとする者の加入の意思表示(申込み)とこれに対する組合の承諾によって成立するものである。 ■加入の自由 組合員資格を有する者が組合に任意に加入し、組合員が任意に脱退することができるとする「加入・脱退の自由」は、組合法の基本原則とされている。すなわち協同組合においては、相互扶助の精神を基調とする人的結合体である結果として、来る者は拒まず、去る者は追わずの門戸開放・機会均等の趣旨がとられている。したがって、組合員資格を有する者の加入は、その者に加入の意思がある限り、原則として組合はこれを拒み得ないし、また加入の意思がないのに強制的に加入させられることもない。 しかし、協同組合が相互扶助の精神に基づき共同して事業を行う一個の事業体である以上、その事業を円滑に実施し、これを効果的に遂行していくためには、組合の趣旨に賛同し、組合運営に積極的に協力・参画し、組合事業を熱心にバックアップしてくれる人々を構成員とする必要がある。同士相寄り、同気相求めるところにこそ、組合は成立するのである。したがって、加入にあたっては、組合の運営を考え「正当な理由」のある場合に限り加入を拒否することが許されるものと考えられている。 ■加入の手続き 加入は、組合と組合員資格を有する者との間で結ばれる契約であるから、加入しようとする加入の申し込みと、これに対する組合の承諾を必要とする。 ▼申し込み 加入の申し込みには、「加入申込書」を組合に提出させることにより行う。原始加入の場合はそれだけでよいが、譲渡加入の場合には、あらかじめ譲渡組合員から「持分譲渡承認願」も提出させることになる。さらに、相続加入の場合には、死亡した組合員の持分を相続した旨を「相続による加入申込書」に記載のうえ申し込むことになる。 ▼承 諾 組合の与える加入の承諾は、理事会の議決をもってたりる(協業組合の場合は総会の特別議決による承諾が必要)。 なお、原始加入の場合、加入申込者は出資金等の払込みを完了したときに組合員としての地位を取得する。
脱 退
■脱退の意義 脱退とは、組合の存続中に特定の組合員が組合という団体を脱し、その組合員としての地位を失うことをいう。組合は組合員の人的結合体であるが、組合の構成員として不適格になったり、組合に留まることを欲しないようになれば、法律の規定により当然に、あるいはその組合員の意思表示によって組合を脱退することができる。 ■自由脱退 自由脱退とは、組合員が相互扶助の精神を失い、あるいは、共同して事業を行う必要性がなくなり、組合との契約を解除することで、組合員の一方的な意思表示のみによって脱退することができ、組合の承諾を必要としない。脱退の時期は、事業年度の終わりである。脱退の時期を年度末としたのは、随時脱退を認めると、脱退に伴う持分の払戻しによって組合財産が減少し、その年度における組合の事業計画の遂行に支障を来し、また共同施設の処分等を余儀なくされ、ひいては他の組合員にはもちろん、第三者の保護にも欠けることになるからである。 ▼自由脱退の予告義務 組合員が脱退しようとするときには、その旨を組合に予告しなければならない。その予告すべき期限は事業年度末日の90日前までである。(この予告期間は短縮できないが、定款で1年以内を限度として延長することはできる)。したがって、この期間後に予告した組合員は、次の事業年度末日でなければ脱退することができない。 組合員は、脱退の予告をしても、事業年度終了日までは、組合員たる地位を失っていないから、組合はその組合員に対してもその年度内に開かれる総会については、総会招集の通知を発し、また、共同事業を利用させる等、他の組合員と同じように扱うことが必要であり、また、その組合員は他の組合員と同様に議決権を行使し、経費を負担する等の権利を有し、義務も負う。 ■法定脱退 組合員の意思のいかんにかかわらず、法定された次の4つの事由に該当するに至ったときは、組合員は直ちに組合員たる資格を失い、組合から脱退することになる。したがって、その事実の発生した時点において組合員は当然脱退するのであって、自由脱退のように事業年度末に脱退するのと相違している。 (1)組合員資格の喪失 組合は、組合員としての資格を持っている者のみに加入を認めている団体であるため、組合員が法律又は定款で定められた資格要件を失ったときは、当然組合を脱退することになる。したがって、組合員は、常に一定の資格要件を満たす者でなければならない。 資格要件は、大別すると次の3つのものがある。①中小企業者であること②資格事業者であること③組合の地区内の者であること。 (2)死亡または解散 自然人たる組合員が死亡したときは組合員不在となるので、当然に脱退する。脱退の効力が発生するのは死亡した日であり、組合において処理した日ではない。なお、民法上のいわゆる失踪宣言を受けた者も、法定脱退となる。 組合員が法人である場合には、その解散(破産による解散を含む)。が脱退の事由となり、当然に脱退する。 (3)除 名 除名とは、組合員の意思いかんにかかわらず、組合において一方的に組合契約を解除し、その組合員たる地位を剥奪することである。もし組合員が組合員としての義務を果たさず、あるいは組合員が組合の存立に重要な影響を与える行為を行なったときは、組合はこれらの組合員を除名することができる。したがって、除名はその組合員にとっては極めて重要な問題であるし、また、一部の者の専制のために利用されることを防止するため、次のような除名原因、手続きを定めている。すなわち、①長期間にわたって組合の施設(事業)を利用しないこと②出資の払込みや賦課金等経費の支払をしないなど、組合に対する義務を怠ったこと③企業組合で、総会の承認を得ないで、組合の行なう事業の部類に属する事業を行なったこと、④協業組合で、総会の承認を得ないで、組合の事業の部類に属する事業を行い、または組合の事業の部類に属する事業を行う法人の役員となったこと⑤その他定款で定める事由に該当する組合員を除名することができる。 定款で定める事由とは、例えば、組合の存立に重要な影響を与えるような場合、すなわち、組合事業の不正利用、組合運営の妨害、犯罪その他組合の信用を失墜させる行為など具体的に掲げることが必要である。 除名は、総会において、特別議決により決定しなければならない。 しかも、組合は事前に(総会の会日の10日前までに)除名しようとする組合員に対して除名理由及び総会において弁明すべき旨を通知することが必要である。この手続を怠ると決議取消の訴えの原因となり、理事には罰則が適用される。 除名による脱退は、除名事由の発生によって生じるのではなく、総会の議決があったときに脱退することになる。しかし、除名の効力はそれによって生じるが除名した組合員にその旨を通知しなければ、これをもってその組合員に対抗することはできない。 (4)公正取引委員会の排除審決 組合員は小規模な事業者でなければならないが、小規模であるか否かの判断は、公正取引委員会の審決を待たなければならない。
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