中協法第40条の規定により作成が義務付けられている書類は、事業報告書、財産目録、貸借対照表、損益計算書、剰余金処分案又は損失処理案である。

第1章 事業報告書

 事業報告書は、通常総会(通常総代会)において組合の事業年度内における事業活動等を組合員に報告する書類である。したがって、その内容は組合の事業活動の状況を的確に記載することが必要である。
 この事業報告書に記載しなければならない事項は中協法規則第83条から第86条に規定されており、この規定にしたがって作成しなければならない。

第2章 財産目録

 組合法上「財産目録」は、決算にあたり必ず作成すべき書類の一つとして規定されている。

 財産目録は、まず資産の内容を示し、ついで負債の内容を示し、その差額を正味資産として表示するものである。

  ここではその作成様式に関し、多様な財産を所有する組合のための様式を示したが、作成に当たっては、それぞれの組合の実情に従って取捨選択することが必要である。

第3章 貸借対照表

 貸借対照表は、継続的な会計帳簿の記録から誘導的に作成されるもので、一定の日時における組合の財政状態を明らかにする資産、負債、純資産の対照表である。
  貸借対照表に記載される資産の価額は、原則として当該資産の処分価額ではなくて取得価額であり、その貸方は組合資本の調達源泉を示し、その借方はその資本の運用状況を示すもので、これが組合財政状態を表示するといわれる所以である。
  貸借対照表を作成するに当たっては、企業会計原則に準拠しなければならないが、組合会計における剰余金の配当、持分の計算、加入金、事業別会計等、特殊な会計が必要になる。
  組合会計基準は、これらの会計に対して一定の基準を示してきた。
  平成19年4月、中協法規則が改正され貸借対照表の表示等に関する規定が設けられたことから、この規定を踏まえて作成することが要請されている。なお、中 協法規則第45条には用語の解釈及び規定の適用に関して、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準、その他の会計の慣行をしん酌することが規定されてお り、この「その他の会計の慣行」には組合会計基準の内容が包含されている。

第4章 損益計算書

 損益計算書は、一事業年度の損益をそ の発生源泉別に収益と費用を対応して示し、組合の経営成績を表示しようとするものであるが、単に経営成績を明らかにするにとどまらず将来の経費節約、収益 の増加を図る参考指針として重要であるばかりでなく、利害関係人にとっては、組合の損益状況及びその趨勢を観察するための書類である。
  この損益計算書に関し、企業会計原則はその損益計算書原則において、その本質に関し、次のように述べている。

「損益計算書は、企業の経営成績を明らかにするため、一会計期間に属するすべての収益とこれに対応するすべての費用とを記載して経常利益を表示し、これに特別損益に属する項目を加減して当期純利益を表示しなければならない。
 すべての費用及び収益は、その支出及び収入に基づいて計上し、その発生した期間に正しく割当てられるように処理しなければならない。ただし、未実現収益は、原則として、当期の損益計算に計上してはならない。
  前払費用及び前受収益は、これを当期の損益計算から除去し、未払費用及び未収収益は、当期の損益計算に計上しなければならない。
 費用及び収益は、総額によって記載することを原則とし、費用の項目と収益の項目とを直接に相殺することによってその全部又は一部を損益計算書から除去してはならない。
 費用及び収益は、その発生源泉にしたがって明瞭に分類し、各収益項目とそれに関連する費用項目とを損益計算書に対応表示しなければならない。」

 組合会計は、企業会計原則に準拠し、さらに組合会計における剰余金の配当、持分計算、加入金、事業別会計等の特殊な会計が必要となる。
 組合会計基準は、これらの会計に対して一定の基準を示してきた。
 なお、中協法規則第45条には、用語の解釈及び規定の適用に関して、「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準、その他の会計の慣行をしん酌する」ことが規定されており、この「その他の会計の慣行」の中に組合会計基準の内容が包含されている。
 また、費用配賦表は中協法規則に特段の規定はないが、損益計算書の一部を構成 する書類であり、事業別損益計算書を作成する際に事業の間接的な経費を各事業別の損益に配賦する場合に作成する。費用配賦表には、すべての問接的な経費を 各事業費に配賦する方法と事業に関する間接的な経費のみを各事業費に配賦し一般管理費を残す方法の2つの方法がある。
 製造原価報告書も中協法規則において作成の義務付けはないが、製造原価の内容を記載する報告書として損益計算書へ添付することができる。

 以上のように、損益計算書は組合の事業内容によりその様式も異なるものがあるが、ここに示したものは、一般的な標準様式であるから、それぞれの組合の実態に即して作成することが必要である。

 損益計算書は事業収益、賦課金等収入、事業費用、一般管理費、事業外収益、事業外費用、特別利益、特別損失に区分するとともに、 それぞれの項目はさらに細分しなければならない。一方で金額が重要でないものについては細分しないことも可能としていることから、組合の実情に応じて判断 することが必要である。また、組合の実施する事業の種類ごとに収益、費用を区分することもできることとされている。
 なお、損益計算書における計算の流れ及び概念は次のとおりとされている。

  事業収益 + 賦課金等収入 - 事業費用
= 事業総損益金額(事業総利益金額又は事業総損失金額)

  事業総損益金額(事業総利益金額又は事業総損失金額) - 一般管理費
= 事業損益金額(事業利益金額又は事業損失金額)

  事業損益金額(事業利益金額又は事業損失金額) + 事業外収益 - 事業外費用
= 経常損益金額(経常利益金額又は経常損失金額)

  経常損益金額(経常利益金額又は経常損失金額) + 特別利益 - 特別損失
= 税引前当期純損益金額(税引前当期純利益金又は税引前当期純損失金額)

  税引前当期純損益金額(税引前当期純利益金又は税引前当期純損失金額)-税等
= 当期純損益金額(当期純利益金額又は当期純損失金額)

第5章 剰余金処分案又は損失処理案

 決算によって算出された当期純利益若しくは当期純損失に前期繰越剰余金若しくは前期繰越損失金を加減した金額を処分又は処理するための書類であって、剰余金処分、損失てん補に当たっては、法令及び定款の規定に従って作成しなければならない。

 組合会計における剰余金の処分には、法定されているものとしては中協法第58条第1項の準備金と第 58条第4項の繰越金の積立てがあり、それぞれ当期純利益金額(繰越損失がある場合にはこれを控除した額)を基準にして10分の1以上(共済事業を実施し ている場合は5分の1以上)を利益準備金として、20分の1以上を教育情報費用繰越金として積み立てることが義務付けられている。
  この積立ては、当期純利益金額(繰越損失を控除した額)が、少額であっても積み立てなければならない。
  利益準備金は、定款で定める額に達するまでは積み立てなければならず(中協法第58条第1項)、損失のてん補に充てる以外には取り崩すことができない(同 条第3項)。また、定款で定める額は、出資総額の2分の1(共済事業を実施している場合は出資総額)を下回ってはならないとされている(同条第2項)。

 教育情報費用繰越金は、組合員の事業に関する経営及び技術の改善向上又は組合事業に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供に関する事業のために積み立てる繰越金であり、教育情報事業の実施に際して取り崩して使用することとされている。

  法定外の処分としては、特別積立金がある。特別積立金は、定款規定により当期純利益金額(繰越損失がある場合にはこれを控除した額)の1O分の1以上を損 失のてん補に充てるために積み立てるものであるが、定款規定に特別積立金が出資総額に相当する金額を超える部分について総会の議決により損失てん補以外の 支出に充てる旨定めている場合は、支出目的にしたがい取崩して使用することができる。教育情報費用繰越金、費用に充てるための取崩しが可能な特別積立金 (例えば、定款参考例に規定する特別積立金は出資総額を超える部分について総会議決により損失のてん補以外の支出に充てることができる)、費用に充てるこ とを積立ての目的とする任意積立金の目的に沿った取崩しは損益計算書に表示される。したがって、剰余金処分案の積立金取崩に表示される積立金は、出資配当 に充てるために取り崩す特別積立金がある場合や他の目的に変更する任意積立金の取崩しなどが該当すると考えられる。
  その他の任意積立金は、総会の議決により積み立て、その積立ての目的にしたがい、取り崩すことができる。
  損失の処理は、定款に損失金のてん補のための取崩しの順序を定めているので、その順序にしたがい取崩しを行う。