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チャレンジ組合ちば 2011.06  館山地区工業経営研究会

テーマ :経営力向上に向けた財務諸表の分析手法の研究

補助事業名 連携組織活性化研究会
対象組合等 館山地区工業経営研究会
  ▼グループデータ
  会 長 吉田 孝住
  住 所 館山市八幡821 館山商工会議所内
  設 立 平成 2年 4月
  業 種 金属機械工業
  会 員 15社
担当部署 千葉県中小企業団体中央会 工業連携支援部(TEL043-242-3277)
専門家 渡邉一成税理士事務所 代表 渡邉 一成

中小企業の実態

 孫子の兵法に、「勝ちに不思議な勝ちあれど、負けに不思議な負けはなし」という有名な言葉があります。この言葉の意味は、勝利にはその要因を明確に説明できない偶然的な要素もあるが、失敗には必ず明確な要因があるということです。この言葉はビジネスの世界にも適用できるのです。
  多くの企業観察をしていると、繁栄企業の中にはその繁栄の要因が容易に理解できないものが多数ありますが、不思議なことに衰退企業には明確な失敗の要因があることに気づきます。その失敗の要因とは、経営の原理原則を守らないことによる失敗です。
  「経営成功の公式は描けないが、失敗しない公式は描ける」と考えるに至った理由は以上のとおりです。そして、逆説的な言い方になりますが、この失敗しない公式を追及することこそが、経営成功への近道になるものだと考えています。何故なら、失敗しない経営を日常的に心がけることによって、「顧客満足度を向上しつつ、一歩一歩着実に発展しよう」とする経営姿勢が生まれ、その結果として経営が好循環に入るからです。
  上記は、私が尊敬する日大・大学院ビジネススクール入江元教授の著書「失敗しない経営」のくだりであります。入江先生の言わんとする内容に私も全く同感で、成功する起業家の本質について入江先生と話していると、「そうそう、その通り」ということが多くてビックリしました。私は、言葉で表現することが苦手なので、難しいニュアンスを入江先生が理路整然と代弁してくれているように感じたのです。
  私は実務家として25年間の会計事務所業務を通じて出会った経営者の成功例や失敗例から数多くのことを学んできました。入江先生は研究者として数十年間にわたり数多くの企業や経営者を観察してきたのです。別々の角度から経営者に接してきたのに、ほぼ同じ考えで意見が合ってしまったのです。その後、入江先生は上記の著書を出版されました。

経営者の考え方

  では成功するためにどうすれば良いのでしょうか。「自社成功モデル」は、経営者が独自に作り上げるしか方法がないと言うのが回答です。それぞれの企業の成功モデルは、先ず自社の明確な目標を設定し、後はトライ・アンド・エラーを繰り返しながら少しずつ築き上げるしか方法がないからです。
  ある経営者は次のように言っています。「他社に学ばない経営者は三流で終わる。他社を真似る経営者は二流に終わる。他社に学びながら自社独自の経営手法を考え出した経営者は一流になる」。
  ここが大事なのですが、実は、このように経営の成功に画一的な公式が存在しないことは、経営者にとってはチャンスと言えるのです。
  そして、変革の時代にはなお、過去の成功モデルにとらわれずに自由に勝利の方程式を描くことが可能になり、無限の可能性が広がってきます。

財務諸表の必要性

  トライアンドエラーを繰り返していく過程で、チェック・修正に必要な資料が財務諸表です。財務諸表に載っている数値が多くのヒントを与えてくれています。
  健康管理をしている人やダイエットする人が必ず体重計に乗り、日々体重チェックをするのと同じ様に、経営改善に財務諸表のチェックは欠かせないのです。
  ところが、残念なことに財務諸表を見たがらない経営者や経営管理者が多いのも現実です。見ない理由の第一は「よく分からないから」ということです。私は10年前から全国各地の中小企業支援機関で財務諸表の見方を講義しています。どこへ行っても不思議と定数以上の人が集まるのです。景気低迷期間が長く続く中で、財務の知識を身につけて改善の手法を模索しようとしているのだと思います。ここ数年は経営者歴20年~ 30年だという方々もたくさん参加されているので、大変嬉しく思っています。
  財務に限らず、経営者自身が研修に参加することは大変意義のあることだと思っています。経営者自身に改善意識が芽生えたことに他ならないからであり、経営者の意識改革こそが経営改善だからです。その気持があれば「よく分からないこと」を人に任せることなく自身で判断するようになるはずです。
  私は、財務諸表の解説をしていて「財務が分かると面白いね」、「へー、財務からこんなことも分かるんだ」という声を聞いたときが一番嬉しいです。

事業の成果

  昨年度は千葉県中央会の依頼で館山地区工業経営研究会に「財務諸表と資金繰り」というテーマで講義をいたしました。「黒字なのに会社にお金がないのはなぜ?」というのがサブテーマでした。
  財務諸表で利益が出ているのにお金がない会社、非常に多いです。というより、ほとんどの会社がその現象で悩んでいます。逆に言うと、利益が出ていてお金もたくさん残っている会社が珍しいのです。それなら、お金がないことが必然ということになります。だから「なぜ?」と悩んではいけないのです。必然的にお金がなくなるカラクリを理解し、自分でコントロールするしかないのです。そのためには財務諸表を読まなくてはなりません。
  講義に入る前に冒頭で出した簡単な設例を2つ紹介します。


【設例1】

本年1月に会社をスタートしました。スタート時の手持ち資金は100万円です。1年間営業した損益計算書には売上高3,000万円、必要経費2,500万円、利益500万円と書いてあります。取引が全て現金取引だったら、12月の現金残高はいくらでしょうか?
  回答は、600万円です。
  スタート時に100万円持っていて、全て現金取引なので利益と同額500万円を回収しているからです。ここまでは全員正解です。
  次に、この会社の資金繰りはどうだったでしょうか?と尋ねると、ほとんどの人が「問題なし」と答えました。でも、はたしてそう言いきれるのでしょうか?1年間の途中の月に赤字の月があったらどうでしょうか。上記損益計算書は1年間トータルの数値です。最終損益計算書だけ見ても、月々にどんなことが起こっているか分かりません。そこで、月次の損益計算をすることが必要になるのです。


【設例2】

設問1と同じ設定で、スタート時手持ち資金100万円、全て現金取引。同じ売上、同じ必要経費、同じ500万円利益の会社ですが、銀行借入があり、月々50万円づつ返済していたら、12月にいくら残るでしょうか?
  回答は0円です。
  当初持っていた100万円と利益で回収した500万円をすべて返済に回したからです。留意してほしいことは、この会社も財務諸表上は500万円の利益が計上されていることです。このように借入れ返済の多い会社は、利益が出ていても返済等で資金が出ていきます。そこで、月々の資金を管理するものが必要になります。資金繰り表をつけて予測することが大事なのです。財務諸表作成と資金管理は別々に必要な作業なのです。
  設例の様に全て現金取引という会社はほとんどなく、現実には売掛金や買掛金などがあり、もっと複雑です。現実の取引では取引時点と資金が動く時点が違っています。取引が発生した時点で記載する財務諸表と資金の動きは確実にずれているのです。
  では、いくらずれているか?この答えもちゃんと財務省表に記載されているのです。ここを理解し管理することが大事なのです。
  講義ではその手法を紹介します。例えば、売上債権回転期間を算出すると、売掛金や受取手形の回収周期が日数で把握でき、棚卸資産回転期間を算出すると、在庫が何日周期で売れていくかが分かります。買入債務回転期間を算出すると自社の支払サイクルが掴めます。
  さらに、この3つの回転期間を管理し、営業資金の必要額を計算しておくことができれば資金を管理できていることになります。この数値を予測に使えたら楽になります。
  数値には表れない経営者の勘が大事なことも十分承知しています。
  数値を極めたからといって、経営が上手くいくわけではないですが、数値をないがしろにしていては、経営は上手くいきません。
  財務を上手く活用すれば、経営者の勘をサポートしてくれるでしょう。(税理士 渡邉 一成)


『中小企業ちば』平成23年6月号に掲載 (※内容・データ等は掲載時の物です)

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